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#光の道

アニメ12話があまりにも破壊力高くてどうしようもなかったので、なんとか落ち着くために書いてみた。
アニメ設定の花村くんと鳴上くんで、12話真っ最中というか、直後というかEDとCパートの間ねつ造です。
書いた人の気持ち的には花鳴ですが、単なる恥ずかしい友情な気もしなくはない。

というわけでのっけからアニメ12話のネタバレ満載なので、まだ見てない方はそっと見なかったことにしてください。トラエスト!





『悠!』

絶望と哀しみの底霧がかかったようにぼやけてはっきりしなくなっていた鳴上悠の意識を、どこからか聞こえてきた聞き覚えのある声がすくい上げた。

(え)

聞き覚えがあるどころではない。ここしばらくは、その声だけがよすがだった。たとえこちらを見てくれない時間が多くなっていたとしても、ただひとつ手のひらの中に残った絆だと、そう思っていた。

だが、それも願望にすぎなかったと、つい先刻思い知らされたところなのに。魔術師のアルカナを持つペルソナは、悠の呼びかけに反応しなかった。アルカナそのものが消滅していたのだから。

『悠うううう! 手を伸ばせええええ!!』

錯覚でも幻聴でもないのだと主張しているような、力強い呼び声が脳裏に響いた。悠が覚えている彼の様子からは考えられないほど、必死な様子に聞こえるのはどうしてか。

──ああ、否、違う。あの花村は、こんな風に名前を呼んだりはしなかった。

だとしたら今、必死で悠の名前を呼び続けているこの声は、明るすぎて見えない場所から降ってくる呼びかけは、一体誰のものなのだろう?
 右手に握り込んでいたカードが、近づいてくる腕に呼応するように温かい光を放つ。
最後に手にしたのは、確か魔術師のカード。では、やはりそうなのか。この声は悠の耳が判断した通り、花村陽介のもので間違いないのか。

──ああ、そうか。

「そう……だ」

どうして、忘れていたのか。
もしかしたら、忘れていたわけではないのかもしれない。ただそれ以上に、心に生まれた不安が生み出した恐怖の影響が強かった。

「俺は……」

声は、悠の名前を呼び続けている。その声に引き寄せられるように、悠はまばゆい光に向かっておそるおそる手を伸ばした。
それがスイッチになったのかもしれない。ただまぶしいだけだった光が揺らめいて、その中心部から誰かの手が現れる。
その手はまっすぐにこちらを目指してくると、迷うことなく悠の手首をつかんだ。離すことなど考えられないとでも言いたげに、強く。

『くうううう!』

そのまま、強い力で引かれる。気づけば、二本の手が悠の手首に絡みついていた。
二本の手が、光に向かって悠を引っ張り上げる。その腕に渾身の力が込められているのは、ただ引っ張られているだけの悠にもわかった。

少しずつ、頭がはっきりしてくる。一体今までなにが起こっていたのか、それもなんとなく予想がつくような気がした。
あれは、おそらく久保のシャドウが作り出した悪夢の世界。現実は、こちら。

そして──光を抜けた先には、両腕を使って悠を引き上げた花村の、必死な形相があった。

「うりゃあっ!!」

悠を引っ張り上げた衝撃を殺しきれずに勢い余って床から転落した花村を、ジライヤが手首をつかまれたままの悠ごと受け止める。ジライヤはふたりを抱きかかえると、すみやかにその場から離脱を始めた。

ジライヤに抱えられたまま、悠はあたりを見回す。そこは、天井の高い広い部屋だった。微かに、見覚えがある──当然だ。ここはボイドクエストの最奥に位置する部屋、久保と久保のシャドウがいた部屋だ。

今まで悠がいたのは、久保のシャドウの中だったということだろう。色とりどりのブロックを身にまとい奇声を上げ続ける、まるで赤ん坊のような形態をとったシャドウは、悪夢の中で悠の首を絞めた化け物と同じ姿をしている。

「大丈夫か?」

気遣われて、意識を遠くから元に戻す。やはり至近距離に、やけに頼りがいのある力強い笑みを浮かべた花村の顔があった。
悠がぼんやりしている間に、体勢を変えたらしい。花村は手首をつかんでいた手をずらし、しっかりと悠の手を握りしめている。その手のひらの温かさに、あちこちにあった強ばりがゆっくりとほどけていくのがわかった。

あの世界から、おそらくは悠の抱いていた恐怖が最悪の形で具現化した悪夢の中に手を伸ばして引きずり出してくれたのは、花村──いや、陽介だ。他の、誰でもない。

今まで一度たりとも呼ばれたことのない呼び名を耳にして、あんなに安心できたのはなぜだろう。
悪夢の世界と現実を隔てる、明確な差異だからか。それとも、呼ばれた名前に込められていた感情そのものが、あの悪夢の世界を完膚無きまでに否定してくれたような気分になったからか。

八十稲羽でいちばん初めに悠が絆を築いた相手は、陽介だ。悪夢の中ですら、陽介は最後まで悠を見捨てずにいてくれた。
絆が消えてしまえば、悠はなにもできない。ペルソナを呼ぶことすらできない。
マーガレットの言っていたことは本当だ。悠はそれを嫌と言うほど思い知ることになり……そして、陽介は悠がからっぽであることを否定してくれた。
もちろん、陽介だけではない。今、悠を満たしてくれているのは、陽介をはじめとする何人もの仲間たちであり、この地で出会った友人と呼べる人たちだ。

どうして、仲間たちの心を信じることができなかったのか。だから不安につけ込まれ、ただひとり久保のシャドウに取り込まれるような事態に陥ってしまったのだ。悠は、自分のふがいなさにため息をつきたい気分になる。

否、本当は誰よりも信じたかった。ただ、自信がなかっただけだ。
他の誰でもない、自分自身に。

ここまで心と心を近くで通わせるような人付き合いなど、今までしたことがなかったから。

「ありがとう、陽介」

だから、いくつもの意味を込めて、悠は心から礼を告げた。
握り直された手を、ぎゅっと強く握り返す。わき上がってくる嬉しさのままに、目元を緩めた。

──すぐ近くにある陽介の耳が一瞬にして真っ赤になったことには、まったく気づかないまま。



「……なあ」

ジュネスの食品売り場のあちこちに仲間たちが散っていくのを見送っていたら、控えめにシャツの背中側を引っ張られた。

「なに?」

振り返るまでもなく、声だけで誰かわかる。悠はちりめんじゃこを選ぶ手は止めずに、首だけを傾げて陽介の呼びかけに応えた。

悪夢の世界で垣間見た未来とこの現実は、ところどころ驚くほど似通っている。だが、あの世界を悪夢たらしめていた要素は、今のところひとつも現実の世界で再現されてはいない。

(あれは、俺が絆を忘れてしまった世界だ)

もしくは、絆の結び目を事件にしか見いだせなかった世界。事件が起きなければ、会うことすらなかった人たちがいたのは事実だ。
だが、それはあくまでもきっかけにすぎない。久保のシャドウを倒してから今まで、というさほど長くもない期間で、悠はそれをやっと心から理解した。
これからもみんなで集まることを当然だと笑い飛ばした陽介に、夏休みなんだから普通にみんなで遊ぶと言い切った千枝に、腐れ縁だと宣言した完二に、どれだけ安堵したことか。

ちょっと泣きそうになったのは、秘密だ。

「お前さ、なんであのとき……その、あんなに悲しそうだったの?」
「え」
「絶望してたっつーか、傷ついてたよな……?」

だから、陽介に耳元でそうささやかれて、つい手が止まった。

(もしかして、伝わってたのか?)

詳しい感情が伝わったわけではないだろう。こちらからは見えなかったが、陽介側からは悠の姿がよく見えていたのかもしれない。だとすれば、表情を見るだけでそれくらいは察せられてしまった可能性もある。

日頃はいつだっておちゃらけていて軽い態度しか見せない陽介だが、じつは他者の感情の機微にさとい。あのときの悠の表情を見てしまったのなら、ずっと気にしていたとしても不思議ではなかった。
ただ、久保のシャドウのせいであんなことになったとはいえ、あれは悠の不安が招いたことでもある。

……それに、その不安はもう払拭されたのだ。
他でもない、仲間たちによって。

ついでに、あんな目に遭わせた久保のシャドウへの報復も完璧だ。使えるアルカナのペルソナを、これでもかと叩きつけてきた。これも、仲間たちのおかげである。本当に、皆の厚意にはいつだって感謝してもし足りない。

つまり、悠は今、かなり幸せだった。
ちょっと泣きそうかもしれないが、それは悪夢にとらわれていたときとは正反対の意味だ。

「……もう、大丈夫だから」

それらをうまく説明できる気がしなくて、悠はただ小さな笑みを浮かべた。肩越しに振り返ると、そこには真面目な顔の陽介がいる。
かと思えば、なぜか悔しそうに眉を寄せた。

「俺には言えない? ……頼りないから?」
「そうじゃなくて」

しかも予想外のことを言われて、悠はあわてて首を左右に振った。陽介が頼りないなど、今まで一度たりとて思ったことがない。
むしろ、逆だ。

「陽介が助けてくれたから、もう大丈夫なんだ」

闇の中から助けてくれただけじゃない。まったく気負うことなく「当然」だと言ってくれたことがどれだけ悠の心を軽くしてくれたか、陽介にはきっとわからないだろう。
だが今のところ、悠にそれを詳しく説明するつもりはなかった。説明しようにもできない、というのが正しいが。

だから、せめて正直な気持ちを表情であらわした。今はもう不安なんて抱いていないこと、皆のことがなによりも大切なこと、その中でも特に陽介を身近に感じていて、たぶん一緒にいてくれるだけでもこの上ない安堵を覚えること。
それらをまとめると、自然と優しい笑顔になる。
惜しむ気はまったくなかったので、そのままその笑顔を披露すると……なぜか、かちんと陽介の動きが止まった。

「?」

だが、それはほんの一瞬のことで。

「そ……そ、か。なら、いいや、うん。よかった」
「うん」

どうやら、陽介も納得してくれたらしい。少しばかり反応が遅くて、しかもうろたえていたのが気になるといえば気になるが、自分にしては長く喋ったから驚かれたのかも、と悠は勝手に解釈した。

さて、だとすれば、今の任務に戻らなければ。最後にひとつ陽介に笑顔を向けて、悠は食品が並んだ棚への意識を集中させる。
みんなが喜んでくれるオムライスを作りたかった。

大好きな人たちと過ごせる、楽しい時間のために。


──そして。

「……だから、その笑顔はずりいっつの……!」

あいにく、悠は菜々子がリクエストしてきたオムライスを美味しく作るための材料選びに集中してしまっていたので、陽介の耳と頬がまたしても見事に真っ赤になっている光景をみごとに見逃したのだった。

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