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#P4A Rank1 #04

アニメ設定の花村さん&鳴上くんで花主が成立するまでをアニメの流れに沿って書こうとしたら、どう見ても友情にしかならなかった話の4話目です。アニメ4話時点に相当します。

インテ発行の「P4A Rank1」に収録済みです。





「腹減った……」

テレビの中から助け出した天城と、その天城を送っていくっていう里中が乗ったバスを見送っていたら、ぽろりと本音が口をついて出た。それに同意するように、腹がきゅるきゅると情けない音を立てる。

それじゃなくても高校生男子なんていつだって腹が減ってるもので、しかも今日はテレビの中で走り回ってきたんだから、エネルギーが切れるのも当然だ。夕飯まで待つとか無理、絶対無理、しんどすぎ。

「ジュネスに戻るか?」

俺の横で、やっぱり走り去るバスを見つめていた鳴上の視線が動く。その反応の早さからすると、鳴上も状況としては同じってとこだろう。こいつは俺より誤差とはいえ(あくまでも誤差だ。身長差五センチなんてのは誤差でしかない)ガタイがいいし、その分燃費が悪くても不思議じゃない。

「いや」

ちょっと考えてから、首を横に振った。バス停まで里中と天城を送ってきたわけだから、俺たちが今いる場所ってのは、稲羽中央通り商店街の外れになる。ここからジュネスに戻ることを考えれば、男子学生の腹を満たすにはもっと手近なところがあった。

「愛家か総菜大学でいいんじゃね。近いし」
「あいや……そうざいだいがく?」

首を傾げながらたどたどしく言葉を繰り返されて、つい笑みが浮かぶ。
そういや、こいつは転校生だった。まだ、稲羽に来てから一週間も経ってない。

しかもここ数日は立て込んでいたから、放課後にあたりを見て回る、なんてことをする暇もなかったはずだ。たぶん商店街より、ジュネスに来た回数のほうが多いに違いない。

だとすれば、やっぱりこいつよりは稲羽歴の長い先輩の俺が案内してやるべきだよな。
まあ、先輩つってもたった半年なんだけど。

「商店街にある店だよ。愛家は、一応中華料理屋のはずな。定食屋っぽいけど。総菜大学は元屋っつーか、その名の通り総菜屋。ビフテキコロッケとビフテキ串が有名ってとこ?」
「商店街」

砂色の瞳をぱちりと大きくひとつ瞬かせて、鳴上がまたしても言葉を繰り返す。今度は、聞き慣れない単語を耳にしたときの戸惑いやたどたどしさは見られなかった。

ただ、ほんの少し。よほど注意して見ていなければわからないくらいわずかに、鳴上の眉が寄る。

──なぜそれに気づいたのか、俺にもよくわからない。
俺は、そんなに鳴上のことを気にしていたんだろうか。よほど注意して見てなければわからないくらいの反応に、どうして気づいたのか。

鳴上の眉が寄った理由は、なんとなく想像できた。こいつは、俺の立場とかそういうモンを知っている。
商店街の人間にとって、俺の存在はどう考えても面白くないものだ。そんなところに俺を連れて行っていいのか、そこで引っかかったんじゃないかと思う。

鳴上はあんまり表情も動かないし、口数も少ないからわかりにくいが、基本優しい。
それゆえに、そんな反応が垣間見えたんじゃないだろうか。このあたり、けっこう難しい。いや、主に俺的に。

まったく気にされないのはある意味気が楽だけど、商店街に顔を出すことで嫌な思いをする可能性にすら気づいてもらえていない可能性もあった。それはそれで少々さみしい。
でも、変に気を遣われすぎるとよけいに窮屈な気分になる。もちろん、気を遣ってくれる相手に非があるわけじゃない。そうさせる自分が嫌になるってやつだ。

「花村に任せる。この辺、まだよく知らないし」

だけど、無意識なのか意識的なのかはわからないものの、鳴上はその間を取ってくれた。そのことに、ホッと肩の力が抜けていく。

俺がいいなら、構わない。鳴上に、そう判断してもらえたような気がしたからかもしれなかった。

「つーか、飯でいいの?」
「俺も腹が減った」

こくりと頷くその姿に、またしても笑いを誘われる。
なんだか、不思議な気分だ。正直、商店街は今はまだちょっとトラウマを刺激してくれる微妙な場所で、可能ならあまり近づきたくないところではあるはずなのに、そんなのどうでもいいかって気持ちになってくる。

そう、そんなのどうでもいい。それより、まだ稲羽のことをよく知らないこいつに、商店街を案内してやりたいって欲求のほうが強い。
なんだかんだ言っても、今の俺はここがそんなに嫌いじゃなかった。まだ好きだとは言い切れないが、嫌いじゃない。ここに来たからこそ、できた絆もある。

それは、かけがえのないものだ。
今、俺の隣にいるこいつにだって、ここに来なければ会えなかった。

「じゃあ、総菜大学行くか。愛家は間食にしちゃボリュームすげえしな。行きがてら、商店街の案内してやるよ」

鳴上の肩を叩いて、きびすを返す。眼前に広がるのは、あまり人通りの多くない商店街の大通りだ。
人通りが多くないと言っても、さすがに住宅地を突っ切ってる道なんかに比べればたくさん人はいる。それも年齢層幅広く、小学生くらいの子どもから爺さん婆さんの世代まで、それこそ老若男女の別はない。

喧噪こそないものの、のんびりとした平和な光景だ。ずっと、見えない壁のようなもので仕切られていたような気がしていたのに、今はそれが感じられない。
これもやっぱり、俺の気分的なものなんだろう。

「よろしく」

しかも、そう言って俺の背中を軽く叩き返してきた鳴上がめずらしくその色素の薄い瞳に好奇心を覗かせていたから、なんとなく俺まで得意な気分になった。

しょうがねえだろ。男子高校生なんて単純なモノなんだからさ。



そんなに店が多いわけじゃない稲羽中央通り商店街で、鳴上が最初に引っかかったのは四目内堂書店だった。店名の通り、本屋だ。

四目内堂書店の中に入ったのなんて、もしかしたら初めてかもしれない。この店、漫画とか雑誌とかはほとんど置いてないからだ。ラインナップがなんとも言えなく偏っているうえに入荷冊数を絞っているせいか、店そのものがなんか閑散としている。
老婆心ながら、大丈夫なのかこれで。いや、俺に言われたくはないかもだけど。

「あの本屋、面白い」

ただ、鳴上はお気に召したようだ。やっぱりこいつ、変わってる。

四目内堂書店を出て、商店街を北に向かって歩きながらそんなことを呟いた鳴上の目は、おもちゃを見つけた子どもみたいにきらきら輝いていた。ちょっと意外だ。
お前も、こんな顔することあるのか。

「面白い……? か?」
「四月二十日に『素敵な漢』発売予定だって張り紙がしてあった」
「なんだそりゃ。てか、どんな内容だよそれ」

タイトルからして不穏なんだが、大丈夫か?

「知らない」
「知らないのかよ!」
「でも、タイトルが気になる」

確かに、一度でも目に入ってしまったら「え?」って言いたくなるタイトルだ。そこでドン引くか興味を持つかは、人によって大きく分かれそうだったが。

「お前、そういうとこは積極的なのな」

そういえば、ジュネスのテレビに手を突っ込んで、俺と里中が度肝を抜かれてるのなんかどこ吹く風で「もっと中に入れるかも」とか言い出したのもこいつだった。

人見知りだけど、好奇心そのものはそれなりに旺盛らしい。一度不思議に思ったら、解明しないと気が済まないタイプか?
いやでも、そこまでの積極性は見いだせないような気もする。今のところ。

「そうか?」

本人にも自覚はなさそうだったので、それに対する反応は目の前にあった肩を軽く叩くだけにしておいた。鳴上も、それ以上は特に追求してこなかった。

でもたぶん、こいつは四月二十日に本屋に来るんだろう。なんとなく、そのときは一緒についてきてもいいかなって思った。
べつに本屋に興味があるわけでも、タイトルから内容が連想できない新刊が気になるからでもない。念のため。

「あ」

次に鳴上が反応したのは、軒先にさびついてまともに動かないガチャガチャとかが並んでいる小さな店だった。こっちは、俺も何度か買い物したことがある。

「あー、あの店な。四六商店つって、駄菓子屋だよ」
「駄菓子屋」

そんな呟きと共にちょっとだけ見開かれた目が、「駄菓子屋って本当に存在するのか」って雄弁に語っていた。全面的に同意だ。俺も、最初見たときはそう思った。

都心部にだって探せば駄菓子屋くらいまだあるんだろうけど、普通に生活してたらあんまり遭遇できない。都市伝説とまでは言わないにしても、近いものはあった。コンビニ以外だとディスカウントショップとかスーパー以外で菓子売ってるとこってあるのって感じだったからいかにもな駄菓子屋はほんと新鮮で、もう未知との遭遇に近かったかもしれない。

「あれ」

かと思ったら、鳴上が指差したのは店頭にあった自動販売機のほうだった。アタリ付き自販機は、こっち来て久しぶりに見た。ちなみに、まだアタリが出たことはない。

自販機そのものは古くても、中身はまあ普通の缶ジュースだ。ただ、商品のセレクトそのものはかなり独特だった。リボンシトロンなんて、ここの自販機でしか見たことない。
つーか、リボンナポリンって北海道限定販売じゃなかったのか? なんだって、八十稲羽で売ってんだ。ここは北海道か。違うだろ。

「買わなきゃいけない気がする」

そして、またしてもなにかが鳴上のツボにはまったようだ。じっと自販機を見つめている鳴上の表情は、この上なく真面目だ。
無表情、というのとも違う。かなり、目に力がこもっている。もし自販機が意志を持っていたら顔を真っ赤にして逃げ出すんじゃないかとか、そんなバカな考えまで浮かんだ。

むしろ、俺自身がアホだ。いやだから、そうじゃなくて。

「え。なにを」
「リボンシトロン」
「よりによってそれ?」
「なんでだろう……?」

不思議そうに首を傾げられても、俺にわかるわけがない。いや、答えてやりたいのは山々なんだが、脳みそ振り絞ってみてもなにひとつマトモな答えが浮かばなかった。
というか、鳴上本人にわかってないんだから俺にわからなくて当然だ。仕方ないから、適当な答えを返す。

「電波かなんかで呼ばれてんじゃねえの?」
「電波発してるのか、これ」
「ねえよ」

納得されそうになったので、慌てて否定した。ほんの数秒前に下した自分自身の判断に後悔する。わからないからって適当なこと言った俺が悪かった。
忘れてたんだ。こいつに、こういう冗談は通じないんだった。

「で、買うの?」
「一本試してみる」
「あ、やっぱそれ見たことないんだ」
「うん。初めて見た」

財布から小銭を取り出して自販機のコイン投入口に押し込んでるところを、鳴上の肩越しにのぞき込む。がこんと音がして、取り出し口にリボンシトロンが落ちてきた。
出てきた缶ジュースを取り出そうとして、鳴上が背を曲げて前屈みになる。

「…………」

まあ、デキゴコロってヤツだ。その背中に、冗談半分で乗り上げてみた。

「ぐえ」
「ぶっ」

予想以上に面白い声がして、つい笑う。
カエルが潰れたようなうめき声って、こういうののことを言うのかもしれない。

「花村、重い」
「そりゃ、全体重かけてますからー。軽いとか言われたら逆にショックですからー」
「そうか……」
「そこで悩むなよ!」

その直後、自販機が鳴り響いて、取り出し口にもう一本リボンシトロンが落ちてきた。




「……硬いけど美味い」

揚げたてのコロッケにかじりついた鳴上が、猫みたいな目を丸くしてしみじみと呟く。

「だろ? ビフテキをコロッケに入れちゃうとこがなんとも田舎だよな……」

名物のビフテキコロッケは、相変わらず筋張っている。なのにちゃんと美味いんだから、そこが不思議だ。
その日の商店街案内は、総菜大学までで終わった。俺も鳴上も腹が減ってたから、店から漂ってくる揚げたてコロッケの匂いに抵抗しきれなかったからだ。

──それに、商店街をそれ以上先に進むのはまだ少しキツイものがある。なにがそんなにキツイのか、それについては深く考えなかった。

ちょうどそのとき、総菜大学の前にセッティングしてあるビールケースで作ったテーブルと椅子を占拠してビフテキコロッケを堪能していた俺たちのすぐそばを、いかにも主婦っぽい二人連れが通り過ぎて行った。すぐ、風に乗って聞こえてきたのは、もうとっくの昔に聞き慣れてしまった陰口だ。

「…………」

鳴上の耳にも聞こえたらしくて、またよく見ないとわからないくらいに眉を寄せている。そんな顔をさせるのが申し訳ないという気持ちは不思議とわき起こってこなくて、どっちかと言えばそんな顔するくらいだったら笑っとけもったいないって思った。

いや、だって、そうだろ。というか、俺が見たい。
まだあんまり回数見たことないけど、こいつが笑ってるのを見ると安心できる。全体的な色素が薄いし、表情が浮かんでいないと人形みたいに整った顔だから、よけいにそう感じるのかもしれない。

そして、どうせ表情が動くのであれば、笑っているほうがよかった。

「悪いな、俺、有名人で」

なるべく軽い調子で、そう言ってみる。空気を読むとか気を遣うとかじゃなくて、こういう努力をしたのは初めてかもしれない。これ以上ないくらい自分のためだから、息苦しさとかそういうモノは端っからカケラもなかった。

鳴上がそれに気づいてくれたのかどうかは、わからない。ただ、少しとはいえ寄っていた眉はいつの間にか元に戻っていて、逆にハの字みたいになっていた。ちょっと情けない感じはするが、眉が寄ってるよりはいいかもしれない。
かと思ったら、今度が目元が緩んだ。少しだけ、笑ってるように見える。

「大変だな」

取り繕うこともなく、だからといって必要以上に気を遣うわけでもなくあっさりとそう告げられて、不思議と肩が軽くなった。
わかりやすく陰口を聞かされて、いい気分になんかなるわけない。でも、その状況が決して『普通』ではないのだと思ってくれる相手が、すぐ近くにいてくれる。

その事実が、たぶん俺をいちばん楽にした。

「んー、そーでもねーよ? 親同士のことだし、俺には関係ないし」

だから、口をついて出た言葉はけっこう、本音に近かった。ただ、そう思いたい、と強がる気持ちも少しはあった。
でも、鳴上がそれに頷いてくれたから、そのときはそれに満足したんだ。

──ひとつ、あえて見ないようにしているものがあることには、気づかないフリをした。

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