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#P4A Rank3 #11

アニメ設定の鳴上くんと花村さんで花主が成立するまでを、アニメの流れに沿って書こうとしている話の11話目です。アニメの11話時点に相当します。

小休止みたいな回。




テレビの中には誰も入れられていなかったはずなのに、誘拐されたりせはちゃんと救出したはずなのに、なぜか被害者が現れた。雨が数日続いた後、八十稲羽が霧に包まれた夜が明けた途端、貯水タンクにひっかかっていたモロキンの死体は発見された。

モロキンは、テレビで話題になったりしていない。学校内での評判はぶっちゃけめちゃめちゃ悪かったし、モロキンを恨んでるヤツなんていくらでもいただろうけど、それだけだ。今まで、俺たちが事実や推測を元にして考え、導き出してきた可能性からは、まったく外れた場所にいる。
あきらかにいろいろとおかしいのに、なにがおかしいのかがさっぱりわからない。
ただ、また被害者が出てしまったことは事実だった。テレビの中に入れても殺せない、だから今度は直接、現実の世界で殺すことにしたのかもしれない。

ただ、謎だけが増えていく。とはいってもテレビの中はクマ曰くなんの変化もなく、マヨナカテレビが映らない以上俺たちには手がかりを得る術がなく、気分的に落ち着かないまま時間は過ぎていく。

しかも、こんなときに限って始まるわけだ。
期末テスト週間、なんてものが。



「ここ、わかんねえ」
「またか」
「また、とか言わないで! 俺が、いちばんそう思ってっから!」
「だろうな」
「ううう」
「図書室では静かに」

というわけで、鳴上のヤツをつかまえて、図書室で試験勉強なんてものをしている。
中間テストを完全に捨ててしまったせいもあって、期末はかなり本気を出さないとヤバい状況だった。いや、誰のせいにもしないけど。この上なく、自業自得だけど。

「で、これ、どうやりゃいいの……?」
「どこからわからないんだ」
「ここから」
「……最初から?」
「そうとも言う」

さっきの授業で宣告された数学のテスト範囲内にある問題を指差すと、鳴上がその猫みたいなアーモンド型の目を丸くした。どうやら、驚かれたようだ。
まあ、驚かれてもあんまりあれこれ言い訳はできない。なにしろこれ、範囲の中でもかなり最初のほうだからな。うん、知ってる。
しかも、ノートには一文たりとも数式が書かれていない。
……うん、どの公式使えばいいかすらわかってないもんで。

「すごいな」

シャーペンを握り直しながら、鳴上が目を丸くしたままなにやら頷いている。
ぶっちゃけ感心されるようなことはなにひとつやっていないはずだけど、もしかしたらテスト直前だっていうのにここまでなにもやってない俺に呆れただけかもしれない。

でも、それにしては褒め言葉なので、じつは違うのかもしれなかった。こう見えて呆れたときの鳴上は、けっこう素で辛辣な言葉を吐く。自覚があるかないかはともかく。
まあ、くらったことあるからわかるんだけどな。

「これは、この公式を使うんだ」
「これ? え、なにこれ」
「そこからか」

今度は、小さくため息。今度こそ呆れられた気がする。とはいえなにひとつ反論はできないので、俺は素直に手を合わせた。

「お願いします、鳴上センセイ……っ!」
「しょうがないな」
「助かる!」

苦笑しながら教科書をめくっている、鳴上の手元をのぞき込む。どこのページになにが書かれているのかちゃんと覚えているようで、ページを繰る指先には迷いがない。
ここは図書室だからとあえて抑えた声で、教科書の該当する場所を指で指し示しながら、順を追って説明してくれる。その説明は、不思議とすんなり頭に入ってきた。授業中に同じことを教師から聞かされるより、よほどわかりやすい。

天城みたいにめちゃめちゃ成績がいいわけではないけど、鳴上は根が真面目なのでちゃんと授業は受けている。そのせいか、教科書と問題集の基礎問題くらいは普通に網羅しているみたいだ。よどみなく流れていく説明をありがたく拝聴しながら、俺は自分のノートにメモを取っていく。

鳴上の声は落ち着いていて聞き取りやすくて、聞いてると自然と集中できた。
知り合ってそう経たない頃からずっと、こいつの声は俺に精神安定剤みたいな効果をもたらしてくれる。理由はわかるような、違うような、もしかしたら刷り込みみたいなものかもしれない。
刷り込みなことは否定しないが、今のところマイナス面もないのでそのままにしている。それに、マイナスどころかプラス効果のほうが多い。
今だって、そうだ。こんなに真面目に勉強してるの、もしかして高校入ってから初めてなんじゃないか?

「お? な、な、これであってる?」
「うん、あってる」
「よっしゃー!」

しかも、基本部分をひととおり説明してもらってから応用問題に取り組んでみたら、ちゃんと正解した。びっくりだ。
集中できていたのか、時間もそんなにかかってない。解法丸暗記ってわけじゃなくて、過程もしっかり頭に入っているので、少しくらいならひねられてもなんとかなる。
うん、鳴上様々だ。なんで、こいつが数学教えてないんだ?
そうだったら、俺の成績もうちょっと上がってると思うのに。

「もう、いっそお前が授業しろよ」
「え、なんで?」
「わかりやすいから」

頭に浮かんだことをシャーペンを指先で回しながらそのまま口に出したら、俺のノートから視線を上げようとしていた鳴上に目を丸くされた。なんでそんなに驚かれるんだ。

「教員免許持ってないし」

まあ、返ってきた反応そのものは、いつも通りの鳴上だった。妙に安心する。
そういう問題じゃねえだろって気はしたけど、鳴上だからしょうがないって素で思った。

「教員免許持ってたって、聞いてもわかんねー授業しかしないなら意味ないじゃん」
「花村は授業聞く気がないだけだと思う」
「えー」

いや、それは否定しないけどな。実際、授業聞く気はあんまりない。
というか、興味がない。

「今やったら、ちゃんとできてるし」

そう言いながら鳴上が手にしていたシャーペンの先で差し示したのは、さっき俺が解いた応用問題だった。そのままかりかりと、ノートの上をペン先が走る。
なにをしようとしているのかとついそのまま見守ってみれば、そこにはいつしかきれいな花丸が描き出された。
鳴上が普段使っているシャーペンだから芯は普通に黒いわけで、カラフルで華やかなってわけにはいかない。でも、ちゃんとした花丸だ。久しぶりに見た。最後に見たの、それこそ小学生のときかもしれない。
もしかして、菜々子ちゃんにもこうやって勉強教えたりしてるんだろうか。なんとなくこの花丸は、そのときの名残というか手癖のような気もした。

というか、鳴上本人は自分が花丸描いてることに気づいてるんだろうか。
……まあいいか。面白いから突っ込まないでおこう。

「そりゃ、お前の教え方がいいからだろ」

かわりに、全然違うことを口にした。とりあえず、これも素直な気持ちだ。
ふたたび顔を上げた鳴上が、ほんのわずか首を傾げる。意味がわからないと言いたげで、その姿になぜか笑いを誘われた。
成績そのものは中の上くらいらしいのに、こうやって他人にちゃんと教えられるって、ある意味すごいと思う。
でも、それは鳴上には伝わらなかったようで、ますます不思議そうな顔をされた。

「俺の説明も先生の受け売りだ。同じことしか言ってない」
「でも、鳴上の説明だとちゃんと頭入ってくるぜ?」
「だから、やる気の問題だろ」

そういえば、さっきもそんなことを言われた気がする。
ただ、もともと勉強には興味ないし好きじゃないわけで、そう簡単にやる気が起こるとは思えない。今はたしかにテスト前で後がないから必死になってるけど、必死になってたってここまで集中できたことはない。
つまり、鳴上にその要因があるってことなんだと思う、けど。
そこまで考えて、ふと気づいた。

「……俺、お前の声が好きなんじゃねえの?」
「え?」
「だから、ちゃんと聞くのかも」

そう思ってみれば、なんとなくいろんなことが腑に落ちた。そうか、だからこいつの声を聞いてると条件反射的に落ち着くのか。
好きなものがすぐ近くにあるだけで、心が安らぐものなんだなって思う。今まで、あんまりそんなこと考えたことがなかった。
好きだから浮かれるってことは、何度もあったんだけど。
んでもって、そんな俺の告白といえば告白をまたしても目を丸くして聞いていた鳴上は、ふと思案顔になってから口を開く。

「……今度から授業内容録音しといて、全部吹き替えるか」

しかも、見た感じ目が真面目で本気っぽいわけだが、マジで?

「え、やってくれんの?」
「冗談だ」
「ちぇ」

どうやら、違ったらしい。当たり前か。
でも、冗談だったことに自分でも引くほどがっかりするのと同時に、鳴上が天然ゆえのボケじゃなくてちゃんと狙って冗談言うこともあるんだなってことを知って、妙な感動に打ち震えたりもしたかもしれない。

「それより、さっさと次やれ。帰れなくなる」
「へーい」

鳴上に促されて、シャーペンを握った。一応、まだやる気も集中力も残っている。それはやっぱり、鳴上が俺のすぐ横で、参考書を開いているからだろう。ちょっと動けば腕が触れ合うような至近距離にいるせいか、くっついているわけでもないのに体温が感じられる。
まだ梅雨は明けてなくて、今日も外は雨で、なのに図書室は本のためにエアコンが入っているから少し気温が低い。
そんな環境は、先月山の中でくっついて過ごした一夜をなぜか思い出させて、少し俺を平静じゃなくさせた。
なにがいちばん焦ったかって、なぜかあれを『いい思い出』にカテゴライズして、記憶の中にしまっていたらしい自分自身にだ。

「…………」
「花村? 手が止まってるぞ」
「あ、ああ。ここ、わかんね」
「そこか? その公式はたしか……」

ごまかし半分で難しそうな問題を指差せば、鳴上は真顔で教科書をめくりだした。またしても鳴上の世話になることになりそうだ。今度、愛家でラーメンでも奢ろう。

そして、さすがに授業全吹き替えは冗談にしても、これからもずっとこうやって一緒にテスト勉強してくれりゃいいのにって、そんなことも考えた。
鳴上は一年しか稲羽にいないんだから、来年はいくら望んだってそれは実現しないんだってことは、嫌というほどわかっていたわけだけど。

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