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#P4A Rank4 #13

アニメ設定の鳴上くんと花村さんで花主が成立するまでを、アニメの流れに沿って書こうとしている話の13話目です。アニメの13話時点に相当します。

花→鳴というか、鳴上くんの出番があんまいない。





気がついたら時間が経っていたということは、よくある。
しかもなにかに集中しているときだと、てきめんだ。時間の経過なんか、そもそも意識の片隅にもない。
それで、時間を忘れるほど、一体なにに集中していたのかと言えば。

「うー……」

ただひたすら携帯の画面をにらみつけてただけ、だったりするわけだが。正確にはやりたいことがあったものの、どうしてもそれ以上先に進めなかった。自分が情けない。
さて、にらめっこを始めて、一体どれくらいの時間が過ぎたのか。

「ヨースケ、なにしてるの? それになにかくっついてる? ねーねー」

微動だにしない俺を不審に思ったのか、さっきからクマが周りをうろちょろしている。べつに俺を心配してるわけじゃなくて、単にヒマなんだろう。
その証拠に、目がきらっきらしていた。今日は人型(っていうのもアレだけど、クマの中身って表現するのもナンだし)だから、なおさらわかりやすい。好奇心でいっぱいですって言われなくてもわかる目で見つめられてみれば、イヤでもわかった。

でもって、俺としてはこの上なく真剣なワケで。
こういう野次馬は、無視するに限る。

「…………」
「あーっ、ムシする気クマねーっ!? ヨースケがクマのこといじめるって、センセイに言いつけてやるー!」

……なんだが、まったく効果がなかった。むしろ、よけい騒がしくなったかもしれない。大体、悠の名前出せば俺が反応すると思ったら大間違いだ。

いや、反応するけど。しちまうけど。
だがしかし、今はどっちかといえばいつもとは逆方向に反応してしまうわけで。

「いーからお前はさっさと寝ろ、クマきち」
「ヨースケひどい! 横暴クマー!」

ついイラッとして邪険にしてみたら、これまたわざとらしく大袈裟な泣き真似をされた。
本気じゃないのは、これまた見ればわかる。無意識か意識してかはわからないものの、こいつはこうすればちゃんと自分の要求が通ることを理解しているだけだ。
その要求も、今は単にヒマだからかまってほしいとか、そんなどっちかといえばかわいらしいモンなんだと思う。人間の姿をしているクマは、中高生と主張すれば十分通る外見をしているものの、中身はぶっちゃけ小学生以下だ。せいぜい、幼稚園児だ。

「いいもん、いいもん。やっぱりセンセイに言いつけるもん」
「お前な……」

ただ、中身が幼稚園児と変わらないだけあって、なんというかこいつの本能みたいなモノはすごい。バカにできない。
その単語は、たしかに抜群の効果をもたらすのだ。特に、今の俺には。
めずらしくも、マイナスの方向とはいえ。

「…………」

とりあえず開き直って、このモヤモヤを晴らすしかないだろう。
幸い、ここにはクマがいる。さっきまでは邪魔だとしか思っていなかったが、よくよく考えてみればこいつは立派な情報源になりえるんだった。すっかり忘れてた。
まあ、邪険な扱いをしたせいですっかり拗ねて、こっちに背中向けてぐるぐるとのの字を書いているクマが、俺の質問に答えてくれるかどうかはわからない。
が、クマのことだから、なにも問題はない気もする。

「……なあ、クマきち」
「はーいー? なになにー?」

案の定、呼びかけてみたら、クマはあっさりけろっとした顔をして振り向いた。
ついさっきまで泣き真似してたことなんて、どう考えても忘れてる。かまってもらえればそれで満足、そんな気持ちが全身に表れていた。
単純だ。やっぱり、クマの中身はただのお子さまだ。
少しは菜々子ちゃんを見習え。いや、菜々子ちゃんはまだ小さいのにいろいろ我慢しすぎてて、それはそれで心配なんだけど。でも、今日なんだか必死になって悠を探してた菜々子ちゃんはなんとなく年相応に見えて、それなりに安心したかもしれない。

……うん、だからそれなんだよ。

「お前、今日は一日中バイトだったよな?」
「ほへ?」

念のために確認してみると、クマは目を丸くして首を傾げた。ベッドの上で、あぐらをかいたまま携帯を握りしめている俺を見つめながら、ぱちぱちと目を瞬かせる。
なんでそんなわかりきっったことを今さら聞くのかと、そう言いたげだ。実際、ここ最近妙に体力がありあまってるクマにそんなシフトをこっそりと押しつけたのは他でもない俺なわけで、わざわざ確かめるまでもない。
なのに、こうやって再確認したのには、もちろん理由がある。

「そんなの、ヨースケがいちばんよく知ってるでしょー。今日はクマ、いっぱい働いたよ! 朝から夜までずーっとクマ! ヨースケ、ほめて!」
「夕方頃も?」
「もちろんクマ」
「着ぐるみはどーした? 着てたのか?」
「今日は着てないよ? だから、ずっとバックヤードに置いてたクマよ。今日はマスコットのお仕事じゃなくて、お店の中のお仕事ばっかりだったの。だから、疲れた!」
「へー。おつかれ」
「でも、ごほうびにママさんがお菓子いっぱい買ってくれたー! あと、おこづかいも増やしてくれた!」
「ふーん……」

そして特に苦労することなく、欲しかった情報はあっさり入手することができた。
つまり、俺の抱えてた疑惑はほぼ確定事項になる、ということで。

「で、それがどうかしたー?」
「いや、どーもしねえよ。明日もバイト早いんだろ? さっさと寝ろって」
「はーい! おやすみヨースケ!」
「おー、おやすみ」

さっきまでごねてたくせに、そんなことをうかがわせないご機嫌な様子で、クマがうきうきと作り付けのクローゼットというか押し入れの中へと潜り込んでいく。それをなんとなく見送って、戸がしっかりと閉まるのを確認してから、俺はふたたび手にしていた携帯へと視線を落とした。
しばらく放っておいたせいで消えていた画面を復帰させると、そこに映ったのは受信メールの一覧。カーソルは、差出人が「鳴上悠」と表示されているメールの上にある。

悠からの受信メールの日付は、八月七日。今日は、八月十六日。その間、九日。
今は夏休みで、学校があるときみたいに毎日会ったりするわけじゃない。それじゃなくても悠はけっこうメール無精で、そんなマメにメールをくれたりするわけでもなかった。
だから、べつにメールにこれくらい間隔が空いてたところでおかしくはない。大体、俺もバイトだなんだで忙しくしてて、べつにこっちから積極的に送っていたわけでもないんだから気にするほうがおかしい。

「……って、それで割り切れたら苦労しないっつの」

普通に考えればおかしくないのに、なぜかどうしようもなく気になってしまうのが、いわゆる恋する男子高校生ってやつなんだと思う。くそ、我ながら厄介だ。
まだ小西先輩のことだって完全に吹っ切ったわけじゃない気がするのに、なんでこんなことになってるんだって思うこともある。だけど、小西先輩に向かっていた感情と、今まさしく悠に向かっている感情は同じようでいてかなり違っていて、困ったことにしっかり両立できていた。

「いやいやいや、両立つってもそういうわけじゃなくて」

誰が聞いてるわけでもないのに、つい言い訳する。大体、小西先輩には派手にフラれてるわけで、好きになったとしてももうこの世にはいないわけで、そのことを考えるとどうしても平静ではいられなくなるから、ついよそ見をしてしまうわけだけど。

悠のことを放っておけないと思ったり、俺があいつを笑わせてやりたいとか幸せにしてやりたいとかやたら恥ずかしいことまで思ってみたり、それ以上にあいつのそばにいたくて、なにより特別でそれを譲りたくない気持ち。
それは両立してはいても、小西先輩への憧憬を軽く凌駕するほどに強くなっている。

──もしかしたら。小西先輩を助けられずに亡くすことになったからこそ、俺はよけい必死になっているのかもしれない。今度こそ、悠だけは絶対になくしたくないと。
そこは、否定できない。

……ただ、今ひっかかってるのは、べつにそれでもなかった。もっと単純なことだ。
今日、クマは一日中ジュネスにいた。シフト表を見ても、それは間違いない。八月十六日のクマのシフトは、午前中から夕方すぎまでがっつり埋まっていた。

だとすると、夕方バス停にいたあのクマは一体、何者だ?

「…………」

意を決して、九日前に届いた悠からのメールを表示させてから、おもむろに返信を選ぶ。
メールの内容は、たあいのないことだ。最近暑いとか、菜々子ちゃんがずぶ濡れになって帰ってきたと思ったら傘なくしたらしいとか、キツネに会ったとか。

「……って、キツネ?」

メールが来たその日はまったく気づかなかったけど、よく考えたら相当おかしくないか、これ。八十稲羽にキツネなんているのか?
いや、いてもおかしくないくらいには田舎だけど。ただ、何日も経ってからそれにツッコミを入れるのもなんだかはばかられて、そこに言及するのはやめた。

なんでだって? できることならウザイって思われたくないんだよ、わかれよ。大体、このメールにはとっくの昔に返事出している。今さら蒸し返すようなものでもない。

だからといって新たにタイトルも考えつかなくて、「Re:」がついたそのままの状態で本文を打つ。書いては消し、書いては消しを繰り返して、数分後になんとか送信できる状態にまで持っていった。少しためらいながら、送信をタッチする。
結局、送ったのは一文。

──今日、夕方バスから降りてきたクマって、もしかして悠?

ただ、それだけだ。
そんな疑惑を抱いたヤツが、俺以外にいたかどうかはわからない。あいつらけっこうみんな天然だし、そもそも悠がクマの着ぐるみ着てバスから降りてくるとか、そんな突拍子もない可能性は考えない気もする。

「……あー……」

じっと携帯を見ていても、返事もすぐには戻ってこない。昼間、里中が電話したときも留守電になっていて繋がらなかった。一体なにをしているのかは知らないけど、やけに忙しいことだけは確実みたいだ。

「そりゃ、俺も忙しかったけどさ……」

夏休みに合わせてイベントやってた上に盆まで重なったせいで、ここ最近のジュネスはやたらめったら忙しかった。この狭い、しかもさびれた八十稲羽にこんなに人いたのかって思わず思っちまうくらいには、客が多かった気がする。ほんとに、どこからあんなにあふれ出てきたんだろう。

今日はやっとバイトが休みになった日で、だからみんなで悠も誘って遊ぼうっていう話になったわけだけど、結果は顔を見ることすらできなかった。菜々子ちゃんがあんな心配してたくらいだし、話を聞いた限りじゃけっこう長いこと様子がおかしいというか、家に居着いてない状態みたいだ。
そんな悠の状態にまったく気づいてなかった俺自身が、なによりもガッカリだけどな。

「しかも、日に日に元気がなくなってってるって言うし」
毎日疲れ切って、しかも夏休みだっていうのに帰りがやたら遅くなるほど、一体なにをしているんだろう。
なにをやってるのか気になるっていうのもあるけど、それ以上にどうしてだろう。俺にもなにも教えてもらえていない、という事実が妙に堪えている自分が痛い。

結局は、知りたいだけだ。あいつのことだから知りたい。そばにいたい。なにか悩んだり大変なことになっているのなら、頼ってほしい。もしかしたら、悠が頼ってくれるかもしれない状況だったかもしれないのに、それをみすみす逃した気がするのが悔しい。

「はぁ……ガッカリ。てか、うぜえ」

最終的にはそんな自分本位な結論に到達しつつ、ひとつ大きなため息を吐いたときだ。

「っ!?」

握ったままだった、携帯から小さな音がした。あわてて待ち受け画面を見れば、そこには受信メール一件の通知。
気づいたら、もう〇時を過ぎていた。届いたメールを開くと、差出人はもちろん悠で。

『陽介には、今度全部話す』

そこに書かれていたのは、そんな短い文章。でも、どうしてだろう。
主に自業自得でぐるぐるしていた心が、自然と落ち着いていく。じんわりと、あたたかいものが広がっていった。
これは、紛れもなく喜びだ。だって、しょうがない。陽介には全部話すって、他でもない悠が言ってくれたんだ。
それが今じゃないのは、気にしないことにしたい。というか、今ここで俺が気にしたってしょうがない。菜々子ちゃんや堂島さんにさえ、悠が言っていないことだ。

それを、俺には話してくれるんだから。

「……だめだこりゃ」

ああ、本当に、どうしようもない。なにがって、自分が。
そんなこと、他の誰でもない俺自身がいちばんよく知ってたけど、声に出してそう呟くしかなかった。

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