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#P4A Rank5 #16

アニメ設定の鳴上くんと花村さんで花主が成立するまでを、アニメの流れに沿って書こうとしている話の16話目です。アニメの16話時点に相当します。

両思いっぽいけど花→鳴です。




「陽介」

激昂した熱が引いていくのは、早かった。

怒りが収まったわけじゃない。でも、少なくとも目の前が真っ赤になって、なにも見えなくなるような衝動は消えた。
いっそ、見事なほどだ。頭より先に感覚でわかるくらい、あっさりと。
それもただ一言、その声で名前を呼ばれただけで。



「陽介?」

意識よりも、本能のほうが早く気づいていたかもしれない。一瞬、そんなことを思った。

「へ?」

弾かれるように顔を上げた先には、アーモンド型をした不思議な色の目がある。じっと、まっすぐにこっちを見つめてくるその瞳には、まるでそのまま吸い込まれてしまいそうな引力が存在していた。
実際には、そんなものないってわかってる。そう感じるのは、多分に俺自身の感情というか感覚が影響してるから、なんだろう。
ただ、口にする言葉より、口元や頬といったわかりやすい部分より、はっきりとこいつの──悠の感情を映す部分であることは確かだ。

そのせいか、気づけばつい見入っている。その瞳が語ろうとしていることを、なにひとつ見逃すまいとしている。
元からそんな傾向はあった気もするが、ここしばらくそれが加速というか加熱している自覚はあった。過剰反応、と言ってもいいかもしれない。
どうしてそんなことになっているかも、一応自覚はあった。期待してはいけないと、あれからずっと理性が言い張っている。
そんなこと、俺自身ちゃんとわかってるんだからできれば放っておいてほしいのに、理性は驚くほど慎重だ。あまり考えないようにしていたはずなのに、四月に起こったことをいろいろ引きずってるんだなって、今さらながらに実感した。

そんな、俺以外にとってはどうでもいいことをぐるぐる考えながら、じっと目の前にある整った造作の顔を眺めていたら。
ぱちり、と。砂色の目がゆっくり、瞬く。

「大丈夫か?」
「え」

改めてそう声をかけられて、やっと悠に心配されているってことに気づいた。

「あ、あれ?」

そこでようやく我に返って、あたりを見回してみる。案の定、他に誰もいない。今、鮫川の河川敷にしつらえられた東屋に残っているのは、俺と悠だけだった。

白鐘が話している最中からすでに傾きはじめていた太陽も、ほぼ沈んでしまっている。まだかろうじて明るくはあったものの、すぐにそれも消えるだろう。
九月も中旬に入ったとはいえ、まだ暑さは十分に残っている。河川敷を吹き抜けていく風が汗ばんだ肌を撫でていくと、涼しくて気持ちがいい。
それ以上に、風にあおられてふわりと浮いた悠の色素の薄い髪へと、全力で意識が向くわけだが。

──ああ、いやだから、そうじゃなくて。
さっきまで全員いたはずなのに、なんで今は俺と悠しかいないのか、それがいちばんの問題なわけだ。
いや、正確にはべつに問題でもなんでもないんだけど。
どっちかといえば、ラッキーなのかもしれないけど。

「みんな、いつの間にかいねぇし」
「陽介が考えごとしてる間に帰った」
「あー……悪ィ」

とりあえずその一言だけで、悠が俺のために残ってくれたことがわかってしまった。
どうしよう、嬉しい。心の底から本音で謝っているはずなのに、顔がにやける。
というか、間違いなくにやけてる気がする。ヤバい。
なんとか意識して、神妙そうな表情を作った。悪いと思ってるのは本当だ。
ただ、それ以上に嬉しさが勝ってしまっただけだ。ガッカリなのはわかってる。
それに、考えごとしてたのは嘘じゃないけど、べつに身のあるモノだったわけじゃない。なのに、それが結果として悠を待たせることになって、しかも心配させていたとなれば、さすがに良心が痛むわけだ。

「菜々子ちゃん、お前の帰り待ってるのにな」

しかも、今思い出したけどそれもあった。本気で頭を抱えたい。
悠が帰らないと、あの家で菜々子ちゃんはひとりっきりだ。まだ小学生の低学年、慣れているとは言っても寂しいだろう。悠だって、いつも菜々子ちゃんのことは気にかけている。
なのに、悠は小さく首を横に振った。

「今日、遅くなるかもって言ってあるから大丈夫。それより、平気なのか?」
「へ?」
「ここ、しわが寄ってるぞ。……直斗のこと、警戒してる?」
「…………」

それどころかずばり言い当てられて、とっさに何の反応もできない。
警戒するなと言われても、たぶん無理だ。たとえ今は考えを改めていたとしても、俺たちの仲間を疑っていたと言われたら、すぐにはいい感情を抱けない。

大体、もともといい感情は抱いていなかった。今では、あの妙にとげとげしい態度や俺たちを挑発するような物言いも、事件を解決したいからこそだったとわかってはいる。
それでも、だ。

「べつに……こっちからケンカ売る気は、ねぇよ」
「わかってる」
「ただ、その……なんての? 懐柔とか、俺たちの中に犯人がいるとか、そんなこと言われてさ……ちょっと、イラッとしただけだ」

結局、さっきから無言で考えていたことを、なんだかしどろもどろになりながら白状することになる。情けないことこの上ない。

「ああ」

そうしたら、なぜか悠の表情が柔らかくなった。特に、目元が。

「え、ちょ?」

夏もそろそろ終盤だっていうのにあんまり日に焼けてない白い手が伸びてきて、俺の髪を撫でている。

「わかってる」
「……あ、うん」

それだけで自分でもびっくりするほど癒されていることに、驚くより先に感心した。いっそ見事だ。
でも、よく考えてみれば当たり前のことだったのかもしれない。ただ名前を呼ばれただけであっという間に冷静になれたくらいなんだから、こうやって直接触れられれば効果は倍増だと思う。

いや、正確にはちょっと違うかもしれない。癒されるを通り越して、照れてきた。だけどいつまででも触っていてほしいって思うし、逆に俺から悠に触れたい衝動もじわじわと湧いてくる。
触りたいなんてけっこういつでも思ってたりするけど、今日のそれはいつもよりかなり強かった。理由は簡単かつ単純で、悠のほうから触ってくれてるからだ。
悠の手から伝わってくる体温を感じると、ほんの数日前の夜を思い出す。場酔いのせいなのか、それとも夏の夜だったせいなのか、いつもより温かかった。というか、熱かった。

──あの夜にあったことは、慎重すぎる理性と本能が協議した結果、熱すぎてどうかなったから見た幻覚だったんじゃないかという説も、俺の頭の中には浮かんでいる。場酔いとはいえものの見事に酔っ払っていた悠の記憶はアテにならないし、そもそもあの夜以降なにも言われていない。悠は根が真面目だから記憶が残っていればなにかしら言ってきそうだし、なにも言われないまま、さらに態度もまったく変わっていないとなれば、やっぱり覚えていないと思ったほうがいいだろう。

「…………」

なんて、あえて自分っていうか俺に優しくない思考を展開することで冷静さを取り戻そうとしているのに、なんでやけにドキドキしているのかが不思議だ。ヤバい。
全ての神経を集中させて悠の手から伝わってくる感覚を追いかけながら、あの夜ほんの一瞬だけ触れ合った熱さを思い出す。そんなことになれば、必然的に生み出されることになるよけいな熱が、あっという間に全身を巡った。どうしようもなく、墓穴だ。

ずっとあのことが気になっていたのは事実で、だからこそ悠が俺に向ける反応には過敏になっていたとはいえ、感触まで思い出す必要はどこにもない。むしろ、夢か幻の可能性のほうが高いんだから思い出さなくていい。なのに、この有様だ。
健全な男子高校生なんだから反芻しないなんてそんなの無理、しょうがないだろって、自分で自分を慰めるしかなかった。虚しい。

「陽介は、優しいから」
「……えっと?」

うっかり考えが別方向、しかもあまり堂々と口に出せない方面に逸れていたせいで、すぐには悠が口にした言葉に反応できなかった。

「へ?」

正確には、言葉の意味がちゃんと理解できなかった。
え、今こいつ、優しいとか言った?
──誰のことを?

「陽介?」

悠の手が、俺の髪をくしゃりとかき回す。その手付きはまるで労るようで、しかも優しく声をかけられて、ますます混乱した。脳内は、すでにテンタラフー状態だ。

「や、あの、誰が?」

それでもなんとか疑問を口にすれば、悠はほんのわずか首を傾げる。またしても、ぱちりと砂色の目が瞬いた。
そのたびにまつげが作り出すわずかな影を、視線が追いかけてしまう。青少年の本能ってやつは、どこまでも己に正直だ。ほんと、自分自身がうんざりする程度には。

「誰って?」

そんな俺の心中に、悠が気づくわけもない。不思議そうに、首を傾げていた。というか、気づかれたら困る。
なに考えていたかばれてるわけもないのに挙動不審になりかけた自分自身をなんとか落ち着かせて、俺は必死に話を続けようとした。

「優しいって、誰のことだよ?」
「ああ、それか。優しいのは、陽介」
「え、ちょ、ま……な、なんで?」
「だって、優しいだろ?」

……なのに素でそう返されて、今度は硬直するかと思った。頼むから、そんな眩しいものを見るような目で見ないでほしい。
ただ、やっぱりそんな心の声は伝わらないわけだ。口に出してないんだから、当然っちゃ当然ではある。

だから、なにも気づいていない悠がじっと俺の目を見つめながら口元と目元をほころばせて笑うなんてことが目の前で起こっても不思議はないし、それを至近距離で目の当たりにした俺が本日何度目になるかわからないテンタラフー状態に陥っても、ひとつもおかしいことはない。
それでも一応、その動揺を表に極力出さないよう尽力はした。

……かろうじて、その努力は実ったような気がする。ぐるぐるどころかまったく平静になれていない俺の動転というか狼狽には特に触れることなく、悠は言葉を続けた。
もしかしたら空気を読んでそっとしておいてくれただけかもしれない、という可能性については考えないことにする。

「陽介は、自分以外の誰かのためにしか怒らない」
「……そ、かな」
「ああ」

悠が頷くと同時に、それまで髪に触れていた手が離れていく。
頭を撫でられるというのは、思った以上に安心感をもたらしてくれるものらしい。ずっと触れていた手が離れていったことに、予想以上の寂寥感を抱いた。

まだ季節は秋にもなっていなくて、風が吹いてくれなかったら汗ばむ暑気だ。普通だったら人の体温なんて鬱陶しいだけなのに、そう感じない。むしろ、離れれば寂しい。
感覚なんて、気持ち次第。それを、身をもって痛感した。

「直斗にああ言われて陽介が冷静でいられなくなったのはみんなのことが大切で、それ以上にみんなことを信じてるからだ。ただ……少し、気になる」
「気になる?」

離れていった白い手の行き先は、悠の口元だった。
あごに手を当てているせいで、曲げられた人差し指の第二関節が唇に当たっている。お約束のように、しかも反射的にそこへ視線が吸い寄せられて、あわててわざとらしくならないよう目を逸らした。
悠の表情は、いつも通りの無表情に近いものに戻っている。真顔で、考え込んでいた。

「なんだか、思い詰めてるみたいだったから」

そして──その口から出てきたのは、そんな呟きだ。

「……白鐘か?」
「ああ」
「あー……それは、そうだったな」

里中が言っていたように、白鐘はすすんでテレビの取材に応じるような奴じゃない。なにか他の目的でもなきゃ、あんなことはしないはずだ。
そんな奴が、テレビに出てあんな挑発的なことをした。しかも、俺たちを集めて推理を聞かせるようなことまでやっていった。
これは一体、どういうことなのか。

「とにかく、マヨナカテレビのチェックは欠かさないようにしよう」
「ああ……だな」

悠の言葉に、頷く。それしかないとは思いつつ、なぜか胸がもやもやしている。

──どうしてだろう。
答えはすぐそこに見えていそうなのに、まるで霧がかっているかのようになにもかもがあいまいだった。

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