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#P4A Rank5 #20

アニメ設定の鳴上くんと花村さんで花主が成立するまでを、アニメの流れに沿って書こうとしている話の20話目です。アニメの20話時点に相当します。

両想いっぽいけど花→鳴です。まだ。一応。
そしてほのぼのはここで一時休止な気もします。21話からの展開的に。




目が覚めたのは、たぶん小さな音がしたからだ。

熟睡してる人間が起きるような、大きな音じゃない。ほんとに小さな、普通だったら気づきもしないような小さな音だったと思う。
だけど、気づいてしまった。布団に潜り込んだのが早かったから、こんな時間に目が覚めてしまったのかもしれない。そもそも、あれは眠いから寝ることにしたというより、あきらかにただのふて寝だった。

「……んー……?」

もそもそと、起き上がる。気づけば枕を抱き込んで寝ていたらしく、頭の下にはなにも置かれてなかった。掛け布団は、完全にどこかへ行っている。しかも寝苦しいと思ったら、俺の上に完二の腕が乗ってやがった。

「……くっそ、重……っ」

ガチガチに鍛えられた筋肉が重いってのは、事実だ。なんとか両手で完二の腕をどかしてから、ふうっとひとつため息をつく。
やけに、疲れた。大体、まだ真夜中だっていうのになんで目が覚めたんだ、俺。
ぼんやりと、そんなことを考えていたら。

「……陽介?」
「へ……? え、あれ? 悠?」

窺うように名前を呼ばれて、初めて自分以外に起きている人がいることを知った。
明かりが消されているせいで暗い部屋の中を探ってみると、入口近くに悠が立っているような気配がする。暗さに目が慣れてくるにつれ、その人影ははっきりと悠の姿を取った。
さすがに、細かい表情まではわからない。ただ、悠が身じろぎしたことだけははっきりとわかる。

「ごめん、起こしたか」

聞こえてきた声は、かなり声量を落とした小さなものだった。
大きな声を出してしまえば、完二やクマまで起こしてしまうかもしれない。そんな、悠の気遣いだろう。
それをムダにしたくなかったので、俺も大きな声は出さないように努力することにした。声が小さくてもわかりやすいよう、大きく首を左右に振る。

「いやいや、お前起きてるなんて知らなかったし。どこか行ってたのか?」
「ちょっと、ロビーに行ってた。喉、渇いたから」
「ああ、そういや自販機あったな」

部屋で茶は淹れられるけど、冷たい飲み物が欲しかったら自販機の世話になるしかない。俺もちょっと冷たいものが恋しくなってきた。やっぱり、寝起きだからか。

「ところで、今何時?」
「十二時ちょっと過ぎ」
「ふーん……」

つまり、二時間近くは寝ていたらしい。というか、ずいぶん早寝したもんだ。
──そこで、ふと気づいた。というか、思い出した。なるべく音を立てないよう注意しながら、布団の上に膝立ちになって悠へと近寄る。
まだ立ったままの悠の足元で止まってから、その顔を見上げた。

「陽介?」

暗いから表情まではっきりとは見えないものの、悠が首を傾げたのがわかる。

「……なあ、悠。お前、もう寝る?」
「え? いや、まだ起きてると思うけど」

ぱちり、と悠が瞬きをした──ように見えた。いつもみたいにその光景が、目前にはっきりと映らないのが、なんだかもどかしい。
この距離なら、見えるはずなのに。
……なら、見えるところに行けばいい話だ。

「じゃあ、風呂入りに行こうぜ。結局、露天も大浴場も入れなかっただろ」

そう言って、俺は子どもが親になにか欲しいものをねだるときみたいに、悠が着ている浴衣の袖を引っ張った。



「……間違いなく、男湯だったよな?」

ガラスの引き戸に手をかけたまま、念のために確認する。またしても全力で桶をぶん投げられたら、たまったもんじゃない。

「大丈夫、男湯だった。三回確認した」

俺の後ろで、神妙な顔で頷いているのは悠だ。悠も、さすがに二度あることは三度ある、だけは回避したいんだろう。俺としても、今度こそ三度目の正直、でいっていただきたい。

「よし……行くぞ!」
「おう!」

気合いを入れてから、がらりと戸を開ける。

「…………やった!」
「勝った!」

今度こそ、露天風呂には誰もいなかった。なんとか、アタリを引けたようだ。

「やったぜ、相棒!」
「ああ、やったな!」

ムダに上がったテンションのままに、悠とがしっと手を組んでみる。無事、桶を投げつけられることなく風呂に入れるってだけでこんなに幸せを感じられるなんて、俺たちってどこまで安上がりかつ単純にできてるのか。
まあ、べつにそれが特別悪いことな気はしないので、このままでいいんじゃないかって普通に思う。そんな盛り上がった気分のまま軽く身体を流して、ようやく俺たちは念願の露天風呂に入ることができた。

「あ~~~……極楽」

いいことなんてひとつもない人生だって悲観的になりまくった後だからか、風呂が気持ちいいってだけでなんだかすべてが報われるような気分になる。
思いっきり手足を伸ばしながら素直な気持ちを口にしたら、俺のすぐ側で湯につかりながらタオルをたたんでいた悠に小さく笑われた。なんでだ。

「気持ちいいな」
「……おう」

ちょっと照れくさくて、顔そのものは前に向けたまま、目線だけを悠のほうに動かす。それでも悠は気づいたようで、今度はほんのわずか楽しそうな笑みを浮かべた。
それだけで、ますます俺の幸せ気分は上昇する。うん、いいことなんてひとつもない人生宣言は速やかに撤回しよう。

俺は今、かなり充実した時間を過ごせている気がする。というか、よく考えたら恋愛的な意味で好きな相手と堂々と一緒に風呂に入れるとか、これってなかなかできない体験なのかもって思ったら、ものすごく恵まれているような気分にさえなってきた。
そもそも、混浴ってわけじゃない露天風呂に一緒に入ったとしても怒られない相手をわざわざ選んで惚れるなってことなのかもしれないが、その辺は不可抗力なのでしょうがないと思う。俺だって、一緒に男女別風呂に入れる相手に惚れる予定はどこにもなかった。

「はー……今日は疲れたわ」

とりあえず、考えてもしかたがないことからは意識を逸らすことにして、俺は今日(正確にはもう昨日)の出来事を振り返りながら深いため息をひとつ吐く。
いやもう、本当に疲れた。自業自得とはいえ女装コンテストには出されるし、化粧されるわなぜかミニスカまではかされるわ、あやうくガムテープですね毛をひっぺがされるところだったとか冗談じゃない。死ぬ。

「文化祭は面白かったぞ。女装コンもミスコンも楽しかったし」
「お前、ほんと前向きね!?」

とはいえ、基本的にお祭りというかイベント好きの悠にそれは通用しなかった。真顔で、あっさり楽しかったと断言される。

いやまあ、よりによって女装コンの出場を「がんばらせてもらう」の一言であっさり受け入れるヤツだから、そうだろうとは思っていた。実際、あのやけに男らしいスケ番コスは、ムダに似合っていた。もしかして、あれをチョイスした天城のセンスの勝利か? かっとんでるけど、吉と働いたのか。半端ないな。
まあ、優勝はクマに持っていかれたし、ミスコンの優勝も水着審査を棄権した直斗が持っていったわけだが。

そういえば、たしかにミスコンは面白かった。特に、完二の反応が。
まあ、ホモ疑惑が晴れてよかったと思う。

「旅館では桶二回も投げつけられるわ、寝起きドッキリは悲惨なことになるわ……夕飯は美味かったけどな!」
「あれ……は……」
「悠?」

途端に悠の声から力がなくなって、俺はあわてて悠の顔をのぞき込む。あ、なんか落ち込んでるみたいだ。

「……後でチカン疑惑、晴らさないと……」
「まあ……がんばれ……?」

落ち込んだ理由は、これまたわかりやすかった。
そもそも、菜々子ちゃんだとまだチカンってなに? ってレベルな気もするんだが、そこから説明するつもりなんだろうか。よけい、ハードル上げてるようにしか見えない。

まあ、そこはとりあえずそっとしておこう。菜々子ちゃんが絡むと悠の判断能力はけっこう簡単におかしくなるので、外野がなにを言っても意味ないことも多い。
それだけ、悠は菜々子ちゃんのことを大切に思ってるんだろう。見ていればわかる。
──そしてそれが、俺は相変わらず少しうらやましいみたいだ。

「ふー……」

べつに悠の妹になりたいわけじゃないだろって自分に言い聞かせながら、視線を悠から逸らした。とはいえ、他に特別見たいものがあるわけでもなくて、結局目線は上へ行く。

夜空を見上げれば、まん丸い月がぽっかりと浮かんでいた。そうか、今日は満月か。
今夜は晴れているせいか、雲ひとつ見えない。秋の空は夏に比べて澄んでいるから、月もよりはっきりと見える。満月が明るすぎるのか月の周りだと小さな星は見えないものの、少し視線を動かせばきらきらと瞬く星もたくさん見えた。
これは、都会では絶対に見られない風景だ。稲羽だからこそ、得られる景色。

ここへ来たばかりの一年前は、絶対好きになれそうもないと思った場所だった。なのに、今はこんなにこの地に愛着がある。
たぶん、そう思えるようになったのも悠のおかげなんだろう。
大切なものができれば、その場所も好きになれる。そういうことなんだと思う。
そのせいなのかもしれない。今夜の月が、やたらときれいに見えるのは。

「……なあ、悠」
「なんだ、陽介?」

夜空を見上げたまま名前を呼べば、穏やかな声が返ってくる。風呂が気持ちいいのか、よく聞けばほんの少しだけいつもより間延びしていた。気が抜けてるんだろう。
もしかしたら、俺が一緒にいるから気を抜いてるのかもとか思ったら、ますます浮かれた気分になった。もう、処置なしだ。

「月、きれいだよなあ」

だから浮かれた気分のまま、心に浮かんできた言葉を口にした。こんなに月がきれいに見えたのは、実際のところ生まれて初めてだったかもしれない。

「そうだな」

悠は、すぐに同意してくれた。
やっぱり、小さく笑いながら。

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