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#P4A RankMAX #NormalEnd

アニメ設定の鳴上くんと花村さんで花主が成立するまでを、アニメの流れに沿って書こうとしている話の最終話です。アニメ25話直後の話になります。

やっと花鳴成立。案の定最後までかかった……。

ノーマルED前提なので、真ED要素はありません。
真ED要素が入っているのはオフ本のみです。

1年間お付き合いありがとうございました。





「行っちまったな」

八十稲羽のホームを出発した車両の短い電車が、遠ざかっていく。悠が乗っているはずのそれを眺めながら、気づけばそう呟いていた。

「また、会えるよね」

みんなに同意を求めるようにそう口にした里中も、俺と同じように電車へと視線を向けたままだ。天城も完二もりせも直斗もクマも、みんなやってることは同じだった。

「当たり前じゃねえっすか」
「まずはゴールデンウィークだよね。ちゃんと予約入れとくから!」
「えへへ、楽しみ!」

完二と天城、りせのやりとりが聞こえる。
またすぐに会える、それを疑ったことなんて一度もない。なのに、妙な焦燥感が襲ってきた。

このまま疎遠になってしまうかもしれないとか、そんなことを心配してるわけじゃない。そんなこと、不安に思ったことはない。
それなのに、どうしてか。

悠は、この一年で変わったと思う。出会った頃は人見知り全開だったけど、今やもうそんな要素はどこにも見当たらない。
それ以外は別に、どこが変わったっていうわけでもないように思う。ただ、前よりもよく笑うようになった。
そんな誰彼構わず笑顔振りまかないでって、つい泣きついてしまいたくなるくらい頻繁に、だ。いや、泣きついたことはないけど。

悠の笑顔は、他人を惹きつけると思う。惚れた欲目かもしれないけど、心の底からそう思う。悠の笑顔を見慣れてるはずの仲間たちですらたまに言葉を失ってるから、やっぱりその認識は間違ってないはずだ。

周りが牽制しすぎたのか、それとも天然で立っていたフラグを全部へし折っていったのかは判断しかねるとはいえ、とにかく稲羽にいる間に悠が恋人を作ることはなかった。
悠は一級フラグ建築士のくせに、そのフラグにまったく気づかないままぶち壊していくという、じつに希有な才能を持っている。罪作りなことこの上ないが、そのおかげで少し安心できていた一面もあるのでなんとも言い難い。

──今までは、そうだった。家族同然の存在である菜々子ちゃんと堂島さん、河原で殴り合いとか青春真っ盛りなことをやらかした親友兼相棒の俺、春からずっと事件を追い続けて共にアメノサギリを倒した仲間たち。やけに顔が広い悠の中でも、それ以上に特別な存在は今のところいない。自惚れじゃなく、そこは胸を張れると思う。

ただ、あくまでも注釈つきだ。今のところ、でしかない。
人と繋がりを持つことになんの抵抗もなくなった悠が、都会に戻って新しい親友を見つけないなんて、そんな保証はない。もしかしたら、今度こそ恋人だってできるかもしれない。
俺以上の特別を、作ってしまうかもしれない。

「……ああ、なるほど」

やっとわかった。俺は、それが怖いのか。というか、そんなの今さらじゃないのか。
この日が来るのは決まっていて、今日以降は俺がいつでも悠にひっついているわけにはいかないんだから、そんなのちょっと考えればわかるはずだった、否、わかっていても大丈夫だと、そう思っていたんだろう。
だって、悠を相手に俺は、これ以上を望むわけにはいかないんだから。

なのに、これ以上を求めてはいけないと何度も自分にそう言い聞かせてきたのに、やっぱりそんなのは嫌だと今になって感情が抗議の声をあげている。悠が俺のすぐ傍からいなくなってしまったことに、ようやく気づいたとでも言いたげに。

だからって、どうすればいいのか。
今以上を望んだところで、それが叶うことなどありえないのに。

……本当に、ありえない?

「花村先輩? どうしたんですか?」
「ヨースケ、行くクマよー?」
「あ?」

俺がまったくもって個人的な思考の海へと沈んでいる間に、帰るという方向で話はまとまっていたようだ。直斗とクマに声をかけられて、俺はようやく我に返った。

「あー、うん。ちょっと先行ってて」

とっさに口から出たのは、そんな言葉だ。
無意識のうちに、手が尻ポケットに突っ込んだままだったスマホへと伸びていた。自分がなにをしようとしているのか、わかるようでわからない。

「ヨースケ?」
「すぐ追いつくから」
「ん、わかったー」

遠ざかっていく足音を聞きながら、メールを打つ。宛先はもちろん、この一年でいちばん多くメールを送った相手だ。
ついさっき、別れたばっかりなのに。離れても仲間だと、親友で相棒だと、そう誓い合ったばかりなのに。こらえ性がなさすぎて、もう泣きつこうとしている。
しかも、今まで以上の関係を求めて。

「はー……俺ってガッカリ」

自分で自分をそう罵ってみても、手は止まらなかった。
しかも入力中の文面から、せめていざというとき冗談にできるようにと姑息な予防線を張ろうとしている無意識まで感じ取れてしまって、我が事ながら苦い笑みしか浮かばない。

それでも止められないあたり、俺はどこまでも悠に甘えているんだと思う。俺が夏からずっと表に出すまいと抑え込んできた気持ちを伝えても、今さら気持ち悪がったり距離を取ったりしないだろう、っていう打算が少なからずあった。
嫌でも住んでいる場所は離れるのだし、おとなしく片想いしているだけで我慢するなら、親友で相棒という立場は死守させてくれるんじゃないか。悠は、それを許してくれそうな気がする。
これもまた、甘えなんだろうけど。

そもそも、友情以上にふくれあがってしまったこの感情を、完全に抑え込めていない自覚はあった。必死で隠していたつもりだけど、だだ漏れていた可能性が皆無だったなんて言い切れない。

だって、そうじゃなかったら。
なんであの夏の夜、見慣れた八十稲羽とは似ても似つかないポートアイランドの一角で、悠は俺にキスなんてしてきたのか。
……いや、単に酔っ払って寝ぼけてただけなんだろうけど。

「……だからって、これはどうなんだよ?」

間違いなく俺自身の手が綴ったメールの文面を眺めて、頭を抱えたくなる。
なのに、手はためらいなく送信ボタンを押していた。理性と感情が別々って、こういうことを言うんだろう。生田目のシャドウに操られたときとは、また別の感覚だ。結局、本音ではこうしたくてたまらなかったってわけだろうから。

でも、だからって。

──突然なんだけど、俺と結婚を前提におつきあいしてくれませんか。

さっき見送ったばっかりの親友兼相棒に、いきなりこんなメール送りつけるのはどうなんだ、俺。

「あああああ……」

送ってしまってから、今さらのように後悔が襲ってきた。本気で今さらだ。
いくら告白するにしたって、もう少しやりようってもんがあるだろう。悠相手に遠回しなこと言っても通じないのは身に染みている(というか、遠回しに言った結果気づいてももらえずに玉砕してきたヤツらの姿をこの目で見てきている)とはいえ、あまりにも直球すぎる気がした。いやでも、逆に直球過ぎて冗談に見えなくもない。悠のあの天然っぷりなら、ありえる。

……どちらにしろ、迷いもしなかったわりにはお世辞にもいいデキとは言えない内容だ。

「くそ……なんで桜散ってんだよ……」

桜に八つ当たりしたってしょうがないんだけど、ついそんな恨み言が口をついて出た。桜もいい迷惑だと思う。

「あー……バカすぎる……」

自分に向かって毒づきながら、空を見上げた。俺たちが霧を晴らした稲羽の空には、澄んだ青色が広がっている。
そんな雲ひとつない一面の青の中を、薄桃色の花びらがひらひらと舞い踊っていた。その光景はこの上なくきれいで幻想的ですらあるのに、どこか心許ない。

それはたぶん、俺が抱いてる不安がにじみ出ているからなんだろう。勝手に暴走したくせに、返ってくる結果が怖いとかどうしようもない。どうしようもない自覚があるだけ、まだマシなのか。

脈がないなら、せめて冗談として受け取って欲しかった。この際、『熱でもあるのか?』とかいう真顔のボケとしか思えないツッコミでもいいから返ってきてもらいたい。
無言でスルーが、たぶんいちばん嫌だ。再起不能になれそうだ。

「…………っ!?」

──スマホを握りしめたまま、ぐるぐるとそんなことを考えていたときだった。
わざわざフォルダ分けまでしてたったひとりにだけ設定した着信音が、控え目に鳴り響いたのは。

「は……早くね?」

どきどき、というよりははらはらしながら着信メールを開く。
差出人の名前は、確認するまでもなかった。なにしろこの着信音が設定されているのは、悠だけだ。

「うう……」

断罪を待つ罪人の気分で、画面に映る小さな文字を目で追う。怖くて不安で、全身がすくんでしまいそうだったけど、それでも見ないという選択肢は存在しなかった。
それくらい、悠のすべてに対して、俺は敏感になっている。執着とか独占欲、そういうものがない交ぜになって自分でもよくわからない。

ただひとつわかるのは、これらは小西先輩へ向けていた想いと似ているようでいて、違うものだということだ。小西先輩への気持ちは、もっとふわふわとして浮かれたものだけで構成されていた。それだけ、だった。
今、悠へと向かっている想いは、そういったふわふわしたものや温かいもの、きらきらしたものと同じくらいの大きさの、もっとどろどろしたものも含んでいる。シャドウじゃないけど、自分でも知りたくなかったようなそんな気持ち。

それがわかってても捨てられないんだから、開き直って満足するまで突き進むしかないんだろうけど。

「……え?」

そんな、我ながらウザイとしか言いようのない気持ちを向けられた悠にはご愁傷様としか言いようが開き直りをした俺の目に、飛び込んできたのは。

『いいよ。ふつつかものですが末永くよろしく』

──つい、目を疑ったとしてもしょうがないような、そんな一文だった。

「ちょ」

そのまま素直に意味を読み取れば、願ってもなかった返事だ。ありえないと思っていた、そんな未来へ続く入口だ。

「いやでも、悠だし」

でも、それを考えると単純に喜べない。一抹、いやかなりの不安を抱えながら、あわててもう一度メールを送る。

──いやいやいや、お前、意味わかってる!? 本気で? 信じるかんな!?

自分から言い出しておいてなにを言ってるんだって感じだけど、これくらい念を押しておかないとまったく安心できそうもなかった。何度だって言う、相手は悠だ。
あきらめるという選択肢がない以上、ここで慎重さを欠くわけにはいかなかった。

『冗談だったのか?』

──100%ガチで本気だけど! 法律上は無理だけど、それくらいの意気込みってことで!

戻ってきた端的な疑問に、勢い込んで返事を返す。送信ボタンを押してからなにをそこまで必死になってるのかって自分にツッコミたくなったけど、ここで面倒くさがったり冗談めかして話を逸らしたらダメな気がした。

こう言ったら怒られそうだけど、せっかく悠が予想外にも真面目に相手してくれてるんだ。このチャンスを逃したら、きっと一生後悔する。

『それなら問題ない』

そして……結局は、こんな思ってもなかった結末にたどり着いた。
これ、夢なんだろうか。いや、そんなバカな。

──つーか、マジで俺の嫁になってくれんの? 親友で相棒で嫁?

恋人通り越して嫁とかなに考えてんだって感じだけど、思わずそう聞いてみた。これはもう、顔も見えなければ声も聞こえないからこその暴挙かもしれない。

『俺が嫁? まあいいや。陽介の嫁ならなってもいい。陽介は誰よりも俺の特別だから』

しかも、その暴挙にはそんな返事が戻ってきたわけで。

「あ、あの天然ジゴロ……!」

その場にしゃがみ込む勢いで、頭を抱えるハメになった。
ただ、どうしようもないくらいに表情はゆるんでいると思う。現在進行形で。

どうしよう、平静を保っていられない。悠が帰ってしまってさみしすぎるあまりこんなとんでもないことやらかしてるっていうのに、それ以上に脳内がおめでたい感じに染まっている。

誰よりも特別だって言ってもらえたこと。男同士で根本的にありえないっていうのに、俺の嫁にならなってもいいって言ってくれたこと。
今日がエイプリルフールじゃなくて、ホントによかった。

──浮気すんなよ。

そんな一言を送信したのは、照れ隠し以外のなにものでもない。いやまあ、浮気されたらどん底までへこむ気しかしないけど、こうやって言質を取った今、あまりその心配はしていなかった。
なにしろ、悠はそっち方面に驚くほど鈍感だ。誰もが知ってるフラグクラッシャーだ。
今、俺のだいぶ常軌を逸した告白をすんなりと受け入れてくれたのが、奇跡としかいいようのないほどに。

『しないよ。俺のファーストキスは陽介だし』

……だから、その一文には本気で驚いた。

「な……なななな、な」

俺と悠がキスしたのは、今まで一度だけだ。
べつに、俺が我慢の限界を突破して手を出したわけじゃない。酔っ払ってぐでんぐでんだった悠に、俺のほうがファーストキスを奪われた。

どう考えても、あのときのことを覚えてるとは思えないのに。

──まさか、記憶あったの……?

恐る恐る、聞いてみる。べつに俺が悪いことしたわけじゃないんだけど、今までそれをずっと黙っていたことに妙な後ろめたさがあった。
もちろん、それは杞憂でしかなくて。

『じつは覚えてる。嫌じゃなかったしな。だから、今後ともよろしく。陽介こそ浮気しないように』

単なる思い込みかもしれない。でも、そうじゃないかもしれない。
顔なんて見えてないのに、声だって聞こえてないのに、なぜか悠がものすごく得意げに笑っているような気がした。



──あの日のことは、高校を卒業して大学生になってふたたび悠と一緒にいられるようになった今でも、よく覚えている。
よりによってメールであんな大切なこと言った俺、どんだけガッカリって後でたっぷり落ち込んだ。まあ、時すでに遅しだったわけだが。
せめて電話すりゃよかったのに。いや、悠は電車に乗ってたわけで、それも無理だったわけだけど。というか半年以上我慢してたくせに、なんであと六時間我慢できなかったんだってしみじみ思う。でも、悠はそんな俺のことを好きだって言ってくれるから、たぶん問題ないんだろう。

「メールもらったとき、もしこの先陽介が俺以上の特別を作ったらって想像してみたら、ものすごく嫌だったんだ。だから、悩まなかった」

あの数週間後に顔をあわせたとき、悠はそんなことを言ってくれた。過程はともかく、結局は俺と同じような結論に至っていたことに、ふたりしてひとしきり笑ったのもいい思い出だ。

……とりあえず、これだけは声を大にして言える。
あれほど悠の顔を見られないことが、声を聞けないのがもどかしく思えたことは、たぶん後にも先にもないだろう。

だって、もう離れることはないから。
いつだって肩を並べて、背中を預け合って、未来へと進んで行くからだ。


End.
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オフ本在庫無くなってしばらくしたらこっちにも上げろください、オフいけない真エンド主義者への拷問かー。

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