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HARU19の新刊

うわわ、広告出てるし!!

今回は無理だなーと思ってスペースすら取ってなかったんですが、委託させてもらえることになった&諸般の事情で急に時間が空いたので3日くらいちょっとがんばってみた結果、無事新刊が出せそうになりました。
入稿ミスしてなければ……。

委託先は東2・ソ-32b「吾輩が猫である」さんです。
ただ、そこで売り子してるのは私です。スペ主いない罠。

ハッピー☆トレジャー!◆ハッピー☆トレジャー!
B6/フルカラー表紙/オンデマンド/52P/予価500円

ペルソナ4の小説本。事故(?)ちゅーから転がり落ちるラブコメなゲーム花主です。
高校2年の秋の話「もう一度キスしたかった」、高校3年のクリスマスイブの話「いつかのメリークリスマス」、大学4年の話「恋じゃなくなる日」の連作3本立て。

今回、主人公は名前なしです。ただ、中身は大体いつもどおりの人です。

表紙はテキトーに作ったのをたろさんがキラキラしくしてくれました。ありがとう!
書店通販はK-BOOKSさんで取り扱ってもらえることになりました。こちらからどうぞ。

サンプルは「続きを読む」からどうぞ。




【もう一度キスしたかった】サンプル

 最初に気づいたのは、柔らかいのに表面だけかさついてるような、そんな感触だった。
 それはちょっと気持ちよくて、ほんの少しの固さが表面を引っ掻いて、なんとも言えない刺激をもたらしてくる。全体的にぼやけていた感覚が、そこを中心にしてじわじわと覚醒していくのがわかった。
 じわじわと感覚が生き返ってきたら、かすんでいた視界も少しずつ像を結びだす。それでも、どうしてか目に映るものに意識を向ける気にならなくて、触れてくるそればかりが気になった。
 なのに、その感触はすぐに離れていってしまう。なんとかそれを引き留めたくて、やっと放置していた視界へと意識を移した。
「……へ?」
 映ってはいたものの、まったく意識にひっかかっていなかったものが、そこでようやく目に入った。それもほんの、少しだけ。
 遠ざかっていく流れる砂色に、視線が惹かれる。いつものことだ。
 いつものこと、なんだけど……あれ?
 遠ざかったわりには、やけに近くないか?
「あ、気がついた」
 ぱちり、と。かなりの至近距離で、髪とよく似た砂色の瞳が瞬いた。
 たぶん、俺の顔を覗き込んでいるんだと思う。気がついたとか言われたということは、今まで俺は意識をどこかに飛ばしてたんだろう。
 それはわかる。わかるんだが。
 今、ここはどこだ?
 一体、なにが起こってるんだ?
「え、えっと……?」
 一気に、意識が覚醒する。
 遠ざかったはずなのに、今なお近いところで揺れている砂色は、こいつの──俺の相棒の髪だ。それは、わかった。
 この距離でも十分近いのに、どうしてそれ以上近づく必要があったのか。そもそも、俺の感覚をよみがえらせたあの感触は、一体なんだったのか。
 というか、俺、今までどうなってたんだ?
「俺、もしかして、瀕死にでもなってた?」
 おそるおそる尋ねてみると、じっと俺の顔を覗き込んでいた相棒は、ふたたびぱちりと目を瞬かせてからほんのわずか首を傾げた。
 ああ、こいつ理解してないのかって、その表情がそう告げている。
 ……一瞬、顔から血の気が失せた。なんか取り返しのつかないことでもしでかしてたら、どうしよう。
 俺にとって、こいつは唯一無二の存在だ。誰よりも大切な相棒で対等でいたくて、でも同じくらいの強さでその強さに憧れている。んでもって、それと同じくらい放っておけないとも思っている。
 つまり、誰よりも自分の素を出せる気楽なヤツでありつつも、できればカッコ悪いとこはこれ以上見せたくないっていう複雑な心境なわけだ。いや、これ以上ないカッコ悪いとこをもう早々に見せてるわけで、今さらそんなの気にするだけムダなのはわかってるんだけど、それでもついイイトコを見せたくなる無駄な男心っていうか!
「いや、落ち着け。激昂状態になってたから、鎮静剤飲ませただけだ」
「あー……ああ、なるほど。バステか」
 でも、首を傾げられたまま告げられた言葉は、案外普通だった。ほっと息を吐く。
 激昂状態だと頭に血が上ってるから、とにかく目の前の敵を殲滅しようってことにしか考えが及ばない。しかも、ペルソナを召喚するとかそんな頭も働かないから、ただひたすらバカみたいに武器を振りかざすだけになる。
 相手にしている敵が物理攻撃で倒せる敵なら放置しても大した被害はないけど、もし物理反射とかだったら大惨事に……と、そこまで考えてはたと気づいた。
「え?」
 きょろきょろと、あたりを見回す。今日は俺と相棒、ふたりだけでダンジョンに足を踏み入れているので、他のメンツの姿は見えない。ペルソナトークでりせの声はたまに聞こえてくるけど、今ここにはいない。
 そして……敵も、いない。
 仕組みっていうかからくりはよくわからないものの、なぜかバッドステータスっていうのは敵との戦闘が終わると勝手に治る。よくわかんないけど、治る。バッドステータスを与えたシャドウの気配が、跡形もなく消え去るからなのかもしれない。
 だから、敵がいないのはおかしかった。こいつが鎮静剤を使ったのなら、絶対に敵が残っているはずだ。そうじゃなかったら、使う意味がない。
 それなのに、なんで?
 飲まされた鎮静剤の効きがいつもより遅かった、とかでもないはずだ。だってあのとき、あの感触があったから俺の意識は戻ってきた。たぶんあのときに、こいつが鎮静剤を使うっていうか飲ませてくれたんだと思う。
「……あれ?」
 そこまで考えて、ひとつ疑問にぶち当たった。
 そもそも、鎮静剤を普通に飲まされたっていうか口の中に突っ込まれたにしては、いろんな意味でおかしかった気がする。というか、あきらかにおかしかった。
「大丈夫そうなら行くぞ」
「お、おう」
 一声かけて、俺が首をひねるのを間近でじっと見つめていた砂色の瞳が遠ざかる。立ち上がった背中は、座っているときの猫背具合を忘れさせるほどにまっすぐだ。
 思わず見とれていたら、手にしていた両手剣を軽く振るのが見えた。
 シャドウは、倒してしまえば跡形も残らない。斬ったところで、血が残ることもない。
 だから、あいつのように剣を振ってみたところで、なにかが落ちるはずもなかった。それでも、ついやってしまう気持ちは、なんとなくわかる。俺も、意味なく手慰みに苦無を投げたりしてることが多い。
 たまにうっかり落としたりするのは……ええと、いわゆる愛嬌ってヤツだ。誰だって、手が滑ることくらいあるんだよ。
 自分で自分にそんな言い訳をしながら、ふと己の手に視線を落とす。苦無は、双剣だ。当たり前だけど、左右両方の手に一本ずつ握ることになる。
 もちろん、右手にも左手にも、俺はしっかり苦無を握っていた。それはいい。それはいいんだが。
 ──なんで、苦無の刃の部分に紅が……血だとしか思えないモノが付いている?
 シャドウを斬っても、その瞬間血のようなものがついたとしても、その痕跡は本体の消滅と共に消えてしまうのが常なのに。
「陽介?」
「あ……ああ。あの、さ」
 振り返った相棒の声に、はっと顔を上げる。
 ほんのわずか首を傾げて、まっすぐに俺を見るその瞳に浮かぶ色は、いつも通りだ。
 おかしいところなんて、ない。なにかを隠しているようにも見えない。
 でも、シャドウが跡形もなく消えているのに、苦無に血の痕が残っている。
 その事実が、ひとつの可能性を示唆していた。
「なんだ、もしかしてまだ調子悪いか? あんまり顔色良くないな。戻るか、今日はふたりしかいないし無理しても意味ない」
「や……でも、頼まれモノ探してたんじゃねえの?」
「今日明日中にってわけじゃない。レベルも上がったし素材も拾えたし、収穫もそこそこあったしな」
『あ、先輩たち、戻ってくる?』
「ああ。今日はもう上がろう」
『はーい!』
 やっぱり、相棒の様子はいつもと変わらない。ペルソナトークでりせと話しながら、カエレールを取り出している。その手つきに不自然なところはどこにもないし、特になにかを我慢しているようにも見えない。
 でも、じゃあ、なんで?
 ここには、俺とこいつしかいない。
 つまり、血を流せるのは俺たちだけなのに。
「…………」
 ざっと自分の身体を確認してみても、どこにもケがなんかなかった。もしかしたらあいつがスキルで治してくれたのかもしれないけど、いくら激昂状態だったからって自分自身を苦無で刺すほどじゃないと思う。今までだって、足元がおろそかになってすっ転んだりしたことはあるものの(ガッカリって言うな)、そんなマヌケなことはさすがにやってない。
 ……だとすれば。
 相棒は、ペルソナを付け替えれば回復のスキルも使える。つまりは、ヤツ自身が負った傷も消せると、そういうことだ。
「帰るぞ」
「あ……ああ」
 相棒が空中にカエレールを放り投げると、床に光の柱が生まれた。見慣れたその光が、なぜかまぶしい。目を細めていたら、うっかりはぐれないようにという心遣いなのか、手が伸びてきて俺の腕をつかんだ。
 軽く、引き寄せられる。近づいた拍子に、またしても目の端を砂色の髪がよぎった。
 俺とこいつの身長は、五センチも変わらない。目線はもともと近くて、じっと整ったその横顔を見つめていたら、ふと思い出す。
 さっきの、感覚。砂色の瞳が、ものすごく間近で俺を見つめていただけじゃない。それにどこか安心したのは間違いないけど、もっと大切なことがある。
 たしかいちばん最初に気づいたのは、あまり馴染みのない触感。そう、触感だった。
 必死で、その感覚が触れた場所を思い出す。一体、どこだったか。たしか、あれは──。
 つい先刻のもののはずなのに、どうしようもなくあやふやになっている記憶をさかのぼりながら、光の柱の中へと足を踏み入れる。
 ふわり、と身体浮く感じがした。もう何度も体感しているその感覚に、もうひとつ思い出す。
「あ」
 やわらかい、だけど少しだけ乾燥していた皮膚が触れた場所。見た感じは涼しげだったのに、いざ触れてみればそこは思ったより熱を持っていて、無意識のうちにその感覚ばかりを追いかけた。
 それは露出している人間の器官としては、かなり敏感な部分だったはずだ。少なくとも、俺が知っている限りでは、だけど。
 なぜ、まずそこに気づいたのか、ようやく納得する。
 あれは──間違いなく、唇だった。どうしてかはわからないけど、そうだった。
 そして、気のせいでなければ。
 そこに触れていたのも、誰かの──相棒の唇、そのものだった。
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