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#十年後

2021年6月22日の、花村と主人公の話。
「5th Anniversary」及びはなぷちミニ新刊の相棒コンビは最終的にこうなる、というまったりした小話です。花主花。
はなぷちミニのペーパーラリーで配布していたペーパーの中身でした。




「ただい……ま?」
「…………」
 家に帰ったら、玄関先で相棒が仁王立ちしていた。
 あれ、なんか説教くらうようなことやったっけって一瞬のうちに考えて、とりあえず心当たりが思い出せないことを確認する。思い出せないだけなので、絶対にやっていないとは言い切れない。
 さすがに付き合いも十年目になると、いろんな地雷の在処やヤバイことになる流れっていうのも本能でわかるようになってきて、早々とんでもない雷を食らうようなことはなくなっていた。俺だって、いくらなんでも学習する。
「もしもーし? どうしたんだよ?」
 それでも、高校のときについた忘れようにも忘れられない俺の不名誉なあだ名は、ガッカリ王子。当時よりはマシになっただろうけど、今はもうガッカリ成分はないなんて口が裂けても言えないし、調子に乗るとすぐ地雷を踏む傾向は未だにある。
 それをこうやって受け入れて、ダメなりになんとかできるようになっただけ、進歩なんだと思っている。まあ、こんな状況に陥ったときに、胸を張って「俺はなにもやってない!」と言い切れないのがいちばんアレなんだってのもわかってはいるから、そこはそっとしておいて欲しい。
「理不尽だ」
「へ?」
 ちなみに、仏頂面の相棒から返ってきた答えは、さっぱり意味がわからなかった。ただまあ、けっこうよくあることだったりもする。
 言霊使いレベルの伝達力を持っているくせに、こいつは日常的にそれを発揮したりはしない。どっちかといえば、言葉は少ないほうだ。ついでに、表情の動きも少ない。ただしそのぶん、眼で語っている。
 でも、必要なときに言葉を出し惜しみなんかしないし、ここぞというときには適確なことを口にしてくれる。その言葉は俺のことよく見てくれてるんだなっていうのがとてもよくわかるもので、そんなに心を尽くされたらそりゃ誰だって心を動かされると思うわけだ。こいつがモテるのがよくわかる。
 ちなみに、モテるくせに今は独り身だ。学生時代は何人か彼女も作ってたみたいだけど、社会人になってからはそんな話も聞いたことない。俺も似たような境遇なんで、そこについてはつっこまないことにしてる。
 というか、そもそも社会人になってどっちかに彼女ができたりしてたら、たぶん今までこのルームシェア生活は続いていなかったと思うのでそれは必然であり、ある意味ではラッキーだったんだろうか。
 少なくともそれをラッキーだと思ってしまう程度には、俺は相棒との同居生活に満足している。それどころか、このままずっと続けたいと思っているらしいことに、たった今気づいた。なんてこった。
 まあ、それはいい。冷静になって、ついでに客観的に考えてみればいろんな価値観がガラガラと音を立てて崩壊しかねない新たなる発見なんだろうけど、今はそこに注目してぐるぐる考えている場合じゃない。
 俺の目の前で、よくわからないけどとんでもない眼力を惜しげもなくさらしているこいつの、不機嫌だかなんだかの理由を追及するほうが先だ。
「理不尽ってなにが?」
「思いつかない」
「や、だからなにが……あ」
 そこまで言いかけて、気づいた。そういえば、今日はたしか六月二十二日。
 日付を勘違いしていなければ、俺の誕生日だ。
「お前、まだこだわってたの?」
「当たり前だ」
 マジか、まだ飽きてなかったのか、っていう呆れ混じりの本音を隠す努力は、最初っから放棄した。
 こいつ相手に、今さらそんな努力をする必要はない。むしろそんなことしたが最後、速攻バレて怒られる。努力が無駄にしかならないので、やるだけバカだ。
「せっかく、陽介の誕生日なのに」
「や、だから、祝ってくれるだけで十分だって」
「どうせなら驚かせたい」
 もちろん、相棒は不満げだった。俺に同意してもらえないからなのか、それとも満足いくサプライズが用意できなかったからなのかは、定かではない。
 こいつは十年前から継続して、俺の誕生日に俺を喜ばせるサプライズ満載の祝いをすることにこだわっている。
 出会った最初の年は互いに互いの誕生日を知らなくて、結局祝えないままだったのがどうも悔しかったらしい。じつは、最初にそんな悔しさを抱いたのは他でもない俺だったりするんだけど、けっこう早々にそんなことどうでもよくなってしまった俺と違って、こいつはずっとそれを実践し続けているわけだ。
 ただ、今はもう悔しさが原動力、というわけでもない。大体、俺の相棒はどこまでもお人好しで、ついでに人を喜ばせるのが好きだ。最初はリベンジが主目的だったみたいだけど、そのたびに俺が喜ぶもんだから、今は完全にそっちがメインになっているようだった。こいつは前向きが服を着て歩いているような奴なので、マイナス感情はあまり長続きしないのだ。そのへん、とてもわかりやすい。
 とはいえ、発想の斜め上さでは他に並ぶ者なんて思いつきもしないさすがの相棒でも、サプライズが十回目ともなるとアイデアが枯渇するようだ。でも、それはしょうがないことなんじゃないかと思う。
 二回目あたりから本人的にはすでに不服らしいが、俺は毎年かなり驚かされているし、それ以上に喜ばせてもらっていた。こいつのサプライズは基本的に相手を楽しませることをいちばんに考えられているので、驚きはしても寿命が縮まるようなことは絶対にない。そういう安心感があるのも、また嬉しい。
 ただ、べつにそんなのなくたって構わないわけだ。サプライズがないからって、大人げなく拗ねたりはしない。
 まあ、あくまでもそれは俺の都合なわけで。
「今回はプレゼントも定番だし、サプライズのポイントがひとつもない。やり直しを要求したい」
 今年の六月、相棒は仕事が妙に忙しかったみたいで、プライベートにほとんど時間が割けていなかった。その弊害がここに出たんだろう。心の底から不服そうだ。
 なんていうか、俺としては、せっかくなんでこいつの機嫌がよろしいほうが嬉しいので、これまた俺の都合でなんとか頭を働かせる。
「や、お前がこうやって毎年、この日は丸一日俺のために惜しげもなく費やしてくれるのって、それだけでけっこう嬉しいもんだぜ? 毎年毎年すげえプレゼントもらってるよなって思ってるし」
 さほど、気が利いたことは言えなかったが。
「でも意外性はないだろ」
「意外性がないからいいんだって。来年も絶対、お前からは絶対祝ってもらえるって安心があんの。それがいいの」
「そりゃ祝うけど、うちでこうやって誕生日当日にふたりで祝うとか、陽介に彼女ができたらさすがに無理だろ?」
 というか、今まで彼女がいたときも、彼女の誘いより相棒の誘いのほうを確実に優先してるから。その結果、平手打ちくらってフラれたこともあるから。
「や、べつに彼女とかいらないし。つーか、ずっとお前と一緒にいればいいんじゃね? そーすりゃ俺、この先ずっと幸せなんじゃね?」
 思わず包み隠さずに本音を言ったら、相棒のあんまり目つきのよろしくない砂色の目が、ぱっちりとしたアーモンド型に見開かれた。
「……そうか? 陽介がそれでいいなら、俺としてはなんの異論もないけど」
「いいに決まってんだろ」
「そうなのか。それはなにより」
 目を見開いたままそう言った相棒がものすごくいつも通りに見えたので、しばらく気づかなかった。だけど、その頭上に花が飛んでるのが見えた気がして、俺もぱちりとひとつ目を瞬かせる。
「……ん?」
 とんでもないことを口走った気もするし、しかもさらっと受け入れられた気もするんだけど、もしかしてこれってツッコミ入れたほうがいいんだろうか。それとも、このままスルーしてていいんだろうか。
 とんでもないこと言ったとは思っていてもその気持ちに嘘はひとつもないし、それが実現してもなんの問題もないと思っているどころかけっこう歓迎している自分がバッチリ存在している以上、もう一言も申し開きはできないんだろうし、する気もないんだろう。
 そんなこと考えてたら、相棒が頭の上に花を飛ばしたままスマホをいじってた。玄関先で、俺の目の前で。
「なにやってんの?」
「陽介にプロポーズされたって報告してる」
「ぶほっ!?」
 しかも、そのまま爆弾発言をかましてくれるし。
「今日、大安だしな」
「そういう問題!?」
「陽介をサプライズで祝うはずが、陽介にサプライズされるとは思わなかった」
 結果的にそうなったことには、今さら異論を唱えない。
「つーか、報告って誰に!?」
「みんなに」
「や……いやいやいや、つーかいいわけ? 男が男にプロポーズとか、そんなぶっとんだことあっさり了解しちゃっていいわけ? 本気にすっからな! やっぱダメって言われても困るかんな!?」
「陽介ならいいぞ」
 そりゃあもういい笑顔でそんな宣言をされて、俺は両手を挙げて全面降伏した。
 ──まさか、出会って十年目の誕生日のプレゼントに、相棒本人をもらえるとは思わなかったわけだが。
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