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#5989

告白の日に書いた告白話(番長視点)に蛇足(花村視点)をつけたもの。
花主でも主花でもなく、花主花だと思います。




「俺、好きだわ」
 放課後、買ったばかりの牛スジコロッケに熱い視線を向けながら、陽介はいきなりそんなことを口走った。
「癖になるって言ってたもんな」
 総菜大学の牛スジコロッケはかなりの歯ごたえがあって、ホントに牛の肉を使ってるのかどうかじつに悩ましい。ただ、固さはとんでもないけど味はそこそこで、陽介の言ってたとおり食べ続けるとなぜか癖になるという罪深いシロモノだ。いや、コロッケだけど。
 ちなみに俺は牛スジコロッケより、雨の日にしかほぼ買えない特製コロッケが好きだ。あれは安いし美味いし言うことない。ジャガイモ最高。
 芋好きの陽介も、きっと好物だろう。食べたことがあるかどうかは、聞いたことがない。今度、買えたらお裾分けしてやるか。
「言っとくけど、コロッケじゃねえぞ」
 そんなこと考えてたら、その思考回路そのものにツッコミを入れられた。陽介はもしかして、俺の心が読めるんだろうか。すごい。
 いやまあ、それはともかく。
「え、じゃあ、なにが?」
 では、さっきの『好き』は一体どこにかかるんだろうか。てっきり、陽介の愛は牛スジコロッケに向かっているんだと思っていた。だって、手にしてる食べかけの牛スジコロッケに向ける視線は相変わらず熱烈だし。
 ……とか思っていたら、陽介が勢いよく顔を上げた。まっすぐな視線が、俺の顔に突き刺さる。
 あ、これ、ものすごく真剣な表情だ。冗談とか、そういうのじゃないやつだ。前に、鮫川でいきなり「殴ってくれ!」って言い出したときと同じ空気を感じる。
 そして、その予想はさほど外れてなかった。主に、方向が斜め上のほうっていう意味で。
「お前のことに決まってんだろ!?」
 なにしろ陽介の口から飛び出してきたのは、そんなセリフだったからだ。
「や、俺も陽介のことは好きだけど」
 たぶん、そういう意味じゃないんだろうなとは思ったものの、一応そう言っておく。嘘じゃないし。
「ちげえよ、そういう普通の意味じゃなくて! 完二に土下座して謝ったほうがいいんじゃねえのってほうの意味で!」
「うん、だと思った」
 やっぱり、そういう意味だったらしい。あれだけ完二のシャドウに拒否反応を示していたのに、人間変われば変わるものだ。もしくは、なまじそういう素質があったから、よけいに反発していたんだろうか。でも、結果的にそこに行き着いた、と。
 ──とか言ったら陽介が泣き出しそうな気がしたので、それは心の中に留めておくことにした。
 陽介のスキンシップや俺への態度は、たしかに今客観的に見てみると、同性の親友に対するものにしては度を越していた気もする。が、言われるまで気づかなかったんだから、俺も大概か。
 大体、嫌じゃなかった。それどころか、けっこう嬉しかった。
 こんなに距離感が近い、親友と呼べるような相手は、陽介が初めてだったから。
「……え、もしかして、だだもれてた?」
「そういうわけじゃないけど、言われてみたら妙に納得した」
「うわあ」
 そして、いざそういう意味で好きと言われても、その気持ちは揺るがない。かなり、嬉しい。
 いろいろあって、恋愛からは一歩遠ざかったところに自分を置いていた陽介が、そういう気持ちをもう一度持てたことが、なによりも嬉しかった。しかもその相手が自分なら、言うことはない。
 ……そうか、言うことないのか。俺も、ある意味わかりやすい。
「まあ、俺はお前のこと、そういう意味で好きなわけじゃない気はするんだけど」
「さ、さすがにそれは知ってます」
「うん。で、それで?」
 とりあえず、そのあたりは全部棚の上に放り投げたまま、じっと陽介の目を見つめた。
 まっすぐ凝視されて、鳶色の瞳が若干ひるむ。俺の視線が異様に強さがあるらしいので、それは仕方がない。むしろ、予想していた反応だ。
「それで……って」
 それでも、陽介は視線を逸らしたりしなかった。我ながら凶悪な眼力してると思うのに、ちゃんとくらいついてくる。
 陽介のそんなところが、俺はやはり、好きらしい。
「お前は俺を好きで、それで、どうしたいんだ?」
「ど、どどどどうしたいって、そんないきなり!?」
「……なんの話だ?」
「え、いや、その」
 なにか誤解したようなのは、とりあえずそっとしておこう。
「陽介はこの先、俺とどうなりたいのかと思って」
「そ……それは」
 今までどおり親友で相棒のままでいいのなら、なにも今いきなり、こんなことは言い出さなかったと思う。
 だとすれば、なにか望みがあるのだろう。俺は、陽介のその望みを叶えたい。
 俺が抱えている陽介への『好き』が、陽介と同じ種類のものかどうかの自信はさっぱりないが、その気持ちは間違いないと思うのだ。
「……あのさ、気持ち悪くはない?」
 そして、しばらくの間せわしなく視線をあちこちさまよわせていた陽介は、意を決したのかふたたび俺に視線を向けて、ちょっとだけ小さい声でそう呟いた。
「ないな」
「ドン引きもしない?」
「なんで陽介相手にドン引かないといけないんだ」
「そ、それなら」
「うん」
「あの、気持ち悪くもなくて、ドン引きもしないなら、俺とそういう意味でお付き合い、してくれます……?」
「いいぞ」
 あっさり答えたら、陽介の目がまん丸くなった。あれ、そんなに意外なこと言ったか?
「……って、マジかよ!?」
「こんなことで嘘言ってどうする」
「や、でも、でもさ!?」
「お前のことをそういう意味で好きかどうかはわからないけど、陽介の望みは叶えてやりたいからな」
 それは、たぶん陽介に会ってからずっと俺の心の内にあることなので、躊躇はどこにもなかった。
 ますます陽介の目が丸くなったのは、どうしてかわからない。
「前言撤回なしだからな」
「そんなことしない」
「俺のことそういう意味で好きじゃなくても、もう絶対お前のこと、離してなんかやらねえかんな」
「うん、まあ、そうだろうな」
 軽く見えて、陽介は一途で真面目だ。ついでに一直線だ。
 心を決める前ならともかく、決めてしまったらそう簡単に逸れたりはしないだろう。そんな気がする。つまり、俺は「陽介だから」というけっこう安直な理由で抜け出せない沼に足を踏み入れたようなものなんだが、それを自覚もしているんだが、でも、どうしてだろう。
「じゃあ、その……これからも、よろしく? オネガイシマス」
「これまで以上にな」
「お、おう!」
 それもまた、楽しい気がしてならない。
 ──そこで、全然関係ないけどひとつ疑問が浮かんだので、聞いてみることにする。
「ところで、ひとつ聞きたいんだが」
「え?」
「俺と豚のショウガ焼き、どっちが好き?」
 それは、ほんのちょっとした思いつきだった。悪戯心に近かったかもしれない。
 ただ、予想以上にそれは陽介の心に突き刺さったようで。
「どっちも好きに決まってんだろ!? お前の作った豚のショウガ焼きとか至高だろ。どっちも誰にもやらねえ!」
 リボンシトロン片手に、ものすごく真剣な顔で力説する陽介の姿が、なぜか今まででいちばんかわいく見えた。





「俺、好きだわ」
 放課後、今日はバイトないっていう相棒をつかまえて総菜大学への寄り道を成立させた俺がこんなことを口走ったのは、その場で思い立ってどうしようもなく言いたくなったわけではない。微妙に眉を寄せながら神妙な顔で牛スジコロッケ食べてる相棒を横目でチラ見していたら、じわじわその気持ちを自覚したわけでもない。
 そもそも、放課後どこか寄っていきたいって声をかけた時点で、そうすることは決めていた。なんでか行き先が総菜大学になったけど、ホントは鮫川とか高台のほうが人がいなくてよかったのは秘密だ。でも、腹が減ったって呟く相棒がなんだか情けない顔になってたから、つい総菜大学を提示してしまった。
 よく考えてみたら、愛家にしなかったのはなんでなんだろう。一条とか長瀬がいたらどうにもならないし、総菜大学なら腰を落ち着けたとしても結局は外なわけで、いざとなれば場所移動も簡単だっていう打算も働いたのかもしれない。とっさに思いついたときはそんなこと思ってもなかったような気もするのに、今思えばそんな気がしてくるから不思議だ。
「癖になるって言ってたもんな」
 なお、色気より食い気を地でいっている相棒が、俺のセリフの真意に気づくことはなかった。そうなる予想はしていたから、さほど意外でもないが。
「言っとくけど、コロッケじゃねえぞ」
 ついさっき俺が口にした「好き」は、もちろんコロッケに向けてのものではない。だからといって、いわゆる親愛とか友情の範疇におさまるモノでもなかった。
 もっと暑苦しくて、今まで知らなかったいっそ暴力的な幸福感と、それと同じくらいの強烈さでそうじゃないものも感じさせて、なんでも輝いて見える浮ついた気分と同時に奈落の底まで落下していくような恐怖も教えてくれて、そして開放が許されなければ心の底で煮詰まってどろどろしていくものだ。
 そりゃあ、気づいたときには焦りに焦ったし、こんな感情がもし相棒にバレたらドン引かれたうえに相棒どころか友達止められちまうんじゃないかとかぐるぐる悩んだ。こうやって告白するなんて、それこそ考えもしなかったくらいに後ろ向きだった。
 けど、どれだけ後ろ向きになろうがうじうじ悩もうが、どうしたってこの気持ちを消すこともごまかすこともできないってことに気づいて開き直ったときに、気づいたわけだ。
 よく考えたら、こいつはそんなことで友達と距離を取るようなヤツじゃない。びっくりするほど心も懐も広くて、他人の気持ちを汲み取ることも上手で、なにより優しくて、世間体やヘンな常識ってモノに捕らわれない柔軟性もある。
 だから、俺がこいつを恋愛的な意味で好きだってくらいでは、少なくとも縁を切られる心配はないと判断した。呆れられるかもしれないし、受け入れてもらえることはなくても、存在を拒絶はされない。そしてたぶん、否定もされない。俺の気持ちそのものは、きっとそっとしておいてくれる。
 まあ、こいつの人の良さと心の広さにつけ込んだと言われればそれまでだし、しかも完全に拒絶されることも突き放されることもないと甘えていると言われてもまったく反論はできない。でも、俺だってかなりの勇気を振り絞ってこうやって告白してるわけだから、その辺は大目に見て欲しかった。
 なにしろ、叶う見込みのない恋心だ。今は亡き先輩に、しかも先輩が死んでしまった後にこっぴどくフラれた後に行き着いた先が、よりによって同性の親友兼相棒か。バイト先が同じなだけの憧れの先輩よりはずっと距離が近いけど、なまじ最初のハードルをあっさり飛び越えすぎたせいなのか、覚えがある感覚よりも感情の落差が激しい気がしてならない。嫌われたらどうしよう、じゃなくて、何が何でも嫌われたくないっていう気持ちが大きいからなんだろう、たぶん。
 まあ、そんな風にハラハラしながらも、やっぱりどうしてもこいつから目は離せないし、気が休まらないからって距離を置くつもりもサラサラないわけだ。
 俺よりガタイもいいし、真顔で冗談かっとばしたりボケ倒したりするくらいフリーダムだけど性格も男らしいし、シャドウを相手にすれば視線で生き物が殺せるくらい凶悪になるっていうのに、こいつなのか。そこまで俺は、こいつを誰にも渡したくないって思ってんのか。まあそうだろう、どう考えても。
 幸いなことに、俺がふたたび誰よりも大切な相手を失う可能性はほとんどなかった。なにしろ、相棒は生きている。俺より強いから、俺より先に死ぬ心配もほぼない。
 たぶん、ずっと側にいられる。いちばんの問題は、それじゃもう満足できそうもない俺の気持ちそのものなんだろう。
「え、じゃあ、なにが?」
 そして当然のことながら、勇気を振り絞った告白は、相棒に通じていなかった。まあ、いいんだけど。
 瞬時に理解されても、たぶんそれはそれできっと困る。
「お前のことに決まってんだろ!?」
 それでも、つい語気が荒くなってしまったのは、条件反射的に鍛えられたツッコミ気質のせいだと思いたい。俺の相棒は、基本的にボケだ。狙ってボケることも多いけど、素でボケてることも多い。天然って怖い。
「や、俺も陽介のことは好きだけど」
 ほら、こんな風にな。
「ちげえよ、そういう普通の意味じゃなくて! 完二に土下座して謝ったほうがいいんじゃねえのってほうの意味で!」
「うん、だと思った」
 だから、ツッコミと自虐も兼ねた説明をしたっていうのに、今になって予想外のセリフが飛び出してきたのはどうしてなんだろう。
 いや、たしかに、こいつは天ボケな部分があるけど、決して空気が読めないわけじゃない。むしろ、そのへんはめっちゃ聡かった。
 ただ、いくらなんでもそんなあっさり予想がつくようなもんでもない、とは思う。俺とこいつの性別が違うならともかく、同じなんだ。基本的に、その発想はないはずだ。
 ……と、いうことは。
「……え、もしかして、だだもれてた?」
「そういうわけじゃないけど、言われてみたら妙に納得した」
「うわあ」
 それはつまり、言われれば納得できる程度には、豪快に主張してたってことじゃないのか。他でもない、俺が。
 そのまま、頭を抱えてしゃがみ込んでしまいたくなったけど、なんとか踏みとどまった。とりあえず納得はしてもらえたし、見た感じでは予想というか願望通り、嫌悪感も特に抱いてはいない様子だから、一応賭けに勝ってはいるわけだ。
「まあ、俺はお前のこと、そういう意味で好きなわけじゃない気はするんだけど」
「さ、さすがにそれは知ってます」
 そこで「じつは俺も」って言われる可能性は、最初から考えてない。しょっちゅう夢見がちなロマンチストって言われる俺でも、そこまで自分に都合のいい夢は見られなかった。
 つまり、俺はこれで十分に満足したわけだ。俺の気持ちを知っても今までと変わらずに相棒でいてくれるっぽいし、これ以上を望もうなんて思わない。
 もちろん他のヤツがいればそれなりに取り繕うつもりだけど、他でもないこいつにもう隠さなくていいっていうだけでこの上ない解放感がもたらされた。どうやら、これでも結構必死だったらしい。
 なので。
「うん。で、それで?」
「それで……って」
 まさか、そんな風に話が続くとは少しも思わなかったわけだ。
 しかも、こいつから言い出すなんて。
「お前は俺を好きで、それで、どうしたいんだ?」
「ど、どどどどうしたいって、そんないきなり!?」
「……なんの話だ?」
「え、いや、その」
 まさか、他人様に見せられないような妄想が一瞬頭の中を駆け巡ったとか、そんなこと口が裂けても言えない。
 いくらその先を夢見ていないと言ったって、俺だって健全な男子高校生だ。こっそり買ったエロ本だって持ってるし、かろうじて堂々とゲットできるグラビアなんかにもなにかと世話になっている。ここ最近はそのテのブツより、体育の時間やテレビの中でのことを思い返したほうが役に立っていた気がするのは、今は棚の上に放り投げておきたい。しかも、最近役に立っていたほうの妄想が今、本人を目の前にして脳内再生されたとか、事実だけどさすがにバレたくない。
 目を逸らしかけて、なんとか思い留まった。ここで逸らしたら、やましいこと考えてましたって白状するようなものだ。
 ありがたいことに、相棒は突っ込まないでおいてくれた。こいつの心の広さには、本当に頭が上がらない。
「陽介はこの先、俺とどうなりたいのかと思って」
「そ……それは」
 そのかわり、ストレートに聞いてきた。答えは明白だけど、この上なく口にしにくいことを。
「……あのさ、気持ち悪くはない?」
 だから、とりあえずそんなことはないだろうとわかっていても予防線を張ってしまったのは、仕方のないことだと思う。しかも悩みに悩んで、葛藤に葛藤を重ねての発言だったのも、しょうがないと思いたい。そうだって言ってくれ。
「ないな」
 案の定、相棒はさらっと言い切った。表情を窺ってみても、無理しているようには見えない。
 ……ほんの少しだけ、勇気が湧いてきた。
「ドン引きもしない?」
「なんで陽介相手にドン引かないといけないんだ」
「そ、それなら」
「うん」
 更に勇気をもらって、覚悟を決める。もう、こうなったらダメ元だ。最初から、OKがもらえると思わなければいい。
「あの、気持ち悪くもなくて、ドン引きもしないなら、俺とそういう意味でお付き合い、してくれます……?」
「いいぞ」
 なのに、勢いのままつっかえつっかえではあったけど言い切ったら、あっさり了承されてしまった。
 どういうことだよ、一体。思わず目をむいたのも、仕方がないと思う。
「……って、マジかよ!?」
「こんなことで嘘言ってどうする」
「や、でも、でもさ!?」
「お前のことをそういう意味で好きかどうかはわからないけど、陽介の望みは叶えてやりたいからな」
 しかも、さらっとそんな殺し文句まで口走りやがった。こいつ、本当に言ってる意味がわかってるんだろうか。わかってないとしか思えない。
 ──でも、だからってそれをみすみす聞き逃すなんてこと、できるわけがなかった。
 だって、俺はこいつのことがどうしようもないくらい、好きなんだから。
「前言撤回なしだからな」
「そんなことしない」
「俺のことそういう意味で好きじゃなくても、もう絶対お前のこと、離してなんかやらねえかんな」
「うん、まあ、そうだろうな」
 改めて、念には念を押す。またしても、あっさり承諾された。
 やっぱり、本当にわかってんのかなって不安になるけど、そこは追求しない。こうなったら正々堂々と、そこにつけ込ませてもらおう。
 なにしろ、俺のほうが不利なんだ。この先、なんとかしてこいつにも俺と同じ「好き」の気持ちを抱いてもらわないといけない。
 言質を取った以上、逃がすつもりなんて少しもないんだから、なにがなんでもそこにたどり着かないといけないのだ。前途多難な気しかしないけど、諦めるつもりはない。
 とりあえず、これからは恋人同士なんだ。実質的には俺の片想いだけど、それでも「お付き合い」はしてもらえるんだから文句はない。
 さっきも言った通り、これから努力すればいいだけの話なのだから。
「じゃあ、その……これからも、よろしく? オネガイシマス」
「これまで以上にな」
「お、おう!」
 なんか、思ったよりこいつも乗り気な気もしたけど、きっと気のせいだろう。これ以上ないくらいに浮かれてるから、そんな感じに思えるだけだ。たぶん、そうだ。恋すると人間はバカになるって本当だな。
 自分に自分でそんなツッコミを入れていたら、ふと相棒が首を傾げた。
「ところで、ひとつ聞きたいんだが」
「え?」
「俺と豚のショウガ焼き、どっちが好き?」
 なぜ、こいつがそんなことを言い出したのかはわからない。たぶん、ただのイタズラ心なんだろう。
 でも、俺にとっては究極の選択みたいなものだった。いや、そもそも選ぶのが無理だ。
 だって、どっちも譲れない。
「どっちも好きに決まってんだろ!? お前の作った豚のショウガ焼きとか至高だろ。どっちも誰にもやらねえ!」
 だから、心の底から叫んだ。商店街中に響き渡る大声だったことにも、その時は気づかなかった。
 だって、それを聞いてぱちりと砂色の瞳を瞬かせた相棒が、じつに楽しそうに満面の笑みを見せたからだ。
 そんなレアなモノ、周りを忘れて見入ったってしょうがない。
 不可抗力だ。どう考えても。

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