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SCC新刊

予定していたものよりだいぶ薄い本ですが。

春眠◆春眠暁を覚えず
B6/フルカラー表紙/オンデマンド/32P/予価300円

ペルソナ4の小説本。未来ねつ造大学生編花主です。
酒を飲むとキス魔になる上に記憶をが吹っ飛ぶ花村と、酒を飲むとおやすみ3秒の主人公がくっつくまでのコメディで、花村さんがとてもぐるぐるしています。

主人公の名前はオリジナルのものになっていますのでご注意ください(名前:月ヶ瀬薫)。

通販はとらのあなさんが取り扱ってくれることになりました(こちら)。
そのうち自家通販も対応します。

中身のサンプルは「続きを読む」からどうぞ。


【春眠暁を覚えず】サンプル

 自慢にもならないが、花村陽介の酒癖は悪い。
 もちろん、ちゃんと自覚もあった。法律上、飲酒が許されたのはまだたったの数カ月前だが、大学生ともなればサークルの新歓コンパなどでどうしたって飲まされることもある。
 最近はいろいろとうるさいのか、無理だと自己申告すれば無理に飲まされたりしない風潮ではあるらしいものの、入学したての大学一年生などあっさり羽目を外すのが通例というものだ。どちらかといえばお調子者のカテゴリに分類される花村など、その代表格と言われてもなにひとつ反論できない。
 そんなわけで、己の酒癖が決して褒められたものでないことは、幸か不幸か成人前にすでに知っていた。高校の修学旅行時に場酔いこそしなかったが、実際のアルコールにはほとほと弱かったらしい。
 とは言うものの、花村本人は酔っ払ったときのことなどなにひとつ覚えていない。それはもう、ものの見事に忘れている。忘却の彼方もいいところだ。
 酒を飲むたびにそれなので、今では限られたもの好きくらいしか花村を酒の席に誘ってこない。とはいえネタとしてはこの上なく面白く、しかもそれなりに盛り上がるようで、サークルのコンパには季節問わず呼び出されていた。出欠の確認さえされないまま、強制参加になっていることも少なくない。
 とりあえずそれについては、人気者は忙しいなと冗談めかしてうそぶくことでよくわからない理不尽さを解消していた。実際、便利屋としてであれ、必要とされていることには変わりない。理由はどうであれ、やはり頼りにされるのは嬉しいことなのだ。
 ただ花村の酒癖の悪さが周囲に知られるにつれ、面白いくらいぱったりと合コンの誘いは途絶えた。
 一応、飲んだときになにをやらかしたかを後日直接被害に聞き回ってはいるので、ある程度であれば把握もしている。だから、合コンの誘いがなくなったのも納得だ。
 花村本人に、記憶はない。覚えもない。
 だが、一緒に酒を飲んだ連中が口を揃えて言うのだから、きっと嘘でも冗談でもないのだろう。
 花村陽介は、酒に弱い。ビール二口でほろ酔い加減になり、中ジョッキどころかグラス一杯で完全な酔っ払いになる。
 しかも、酔い方がひどい。酔うとキス魔に変貌し、誰彼構わずキスして回るというのだ。
 それはもう、本人に記憶がないだけに、聞かされるたびに頭を抱えるしかない大惨事であった。



「外で酒飲まないって言ってんのに、なんでああなるんだよおぉ……?」
「いいじゃないか、減るもんじゃなし」
「いやいやいや。減るから!」
「そうか? ほっぺにチューとかデコチューレベルなんだろ? 減らないって」
「そうだけどおおお! 減るんだよおお!」
 なにが問題なのかわからない、そう言いたげな様子で砂色の瞳を瞬かせる高校時代からの親友兼相棒に向かって、花村は必死の勢いでそう主張した。
 基本的に一途であり、外見の軽薄さとは裏腹に真面目でお堅い部分を持っていることは、花村自身がよく知っている。それこそ数年前からずっと彼女が欲しいと言い続けているし、女の子のことは大好きだし、いわゆるラッキースケベを堪能できるのなら積極的に機会を作りに行くだろう。それは、断言出来る。
 だが、それはあくまでも〝女性〟という自分とは性別が違う存在全体への憧れと条件反射のようなものであって、女子であれば誰でもいい、大歓迎、などということは絶対にないのだ。
 どうせ視界に入れるなら出来れば可愛い子のほうがいいとか、美人のほうが見ていて楽しいとかはあるが、好きな人が側にいればたとえスーパーモデルクラスのスタイル抜群な美人がいたところでそもそも視界にすら入れようとせず、完全にその他大勢の他人としてカテゴライズして意識も払わない、花村はそういう人間だった。
 つまり、好きな人以外にキスするなんて絶対ナシ、ありえない。たとえそれが頬や額にといったただの親愛を示す場所へのキスであり、世間的にはさほど問題にならなかったとしても、だ。
 なのに、酒を飲んでしまった自分はそれを自分からして回っているというのだから、本気で恨めしい。己の酒癖を知ってからは外でのアルコール摂取は控えているというのに、どういうわけかいつの間にか飲まされている。よほど、酒を飲んだ花村は面白いらしい。
 さらに花村はそこそこ見目も整っており、表面上は取っつきやすい性格もしているため、そんな誰彼構わずキスして回るという暴挙に出てもさほど嫌がられたりはしない。女子は「花村くんならまあいいか」程度でじつにあっさりと済ますし、男子は男子で「てめー正気に返れ!」などと小突いたりはするが、ぶん殴って止めるほど切実だとも思わないようだった。
 出来ることなら飲み会には呼ばないで欲しい、呼ぶなら酒を飲ませないで欲しい、それが花村の心からの願いなのだが、ネタが最優先になりがちなサークルの飲み会では大体無視されるのが悩みの種である。それ以外では、なんとか花村の希望が尊重されていた。
 ちなみに、なぜ今こうやって親友兼相棒に泣きついているかというと、昨夜また酒を飲まされて見事に記憶を吹っ飛ばしたからである。どうやら、いつの間にかオレンジジュースに混ぜられていたらしい。
 吹っ飛んだ記憶は今さら回収したくもなかったが、一応聞いてみたところ、やっぱり男女構わずキスして回っていたようだ。今回も頬にしかキスしていなかったあたりが、せめてもの救いか。
「陽介はロマンチストだからなあ」
「そーゆー問題じゃねえよ……や、間違ってもないけどさ……」
 のんきに笑われて、がくりと肩を落とす。ロマンチストなのは今さら否定しないが、それをこいつにだけは言われたくない、これが花村の本音だ。
 いや、確かにこの反応そのものは、まったくおかしいものではないのだ。高校二年のときに出会い、それ以来ずっと誰よりも近しいところにいて、もしかしたら花村自身すら気づいていないことも知っているのではないかと思わせるこの親友兼相棒は、花村が一途なことも知っているし、軽そうに見えてまったくそんなことはないことも知っている。彼女が欲しいと言い続けているのに、どういうわけか出会ってから一度も花村に彼女がいたことがないという悲しい事実についても知っている。
 彼女がいるわけでもなく、さらにどうせ頬や額にしかキスしないのだから、特に問題はない。された相手が騒ぐなら問題だが、騒がれたこともない。花村本人はなんとかそれを回避しようとして外での飲酒は極力避けようとしているのだから、それを知っていて飲ませるような連中がキス魔と化した酔っ払い花村に襲われたところで、同情する余地もない。家飲みなら少々羽目を外そうがお互い納得しているだろうし、やはり問題はあるように見えない。だとすれば、残る問題は恋愛に関して夢見がちかつロマンチストな陽介の心持ちだけ、おそらく彼の見解はそんなところだろう。
「そう気を落とすなって。昨夜は野郎ばっかりじゃなかったんだろ? 女の子もいたって聞いたし」
「いたけど! それなんの慰めになんの!?」
「ヒゲ剃ったあとがちょっとじょりじょりしてるとこにちゅーするよりは、女の子のすべすべな肌のほうがやっぱりいいかなって」
「だから、そーゆー問題じゃねえんだよおおお! そもそも、誰彼構わずしたくねえんだよおおお!」
 さて、ここで立ちはだかるいちばんの問題は。
 今、現在進行形で落ち込む花村を慰めようとしているのかよけいへこませようとしているのかさっぱりわからない、高校からの親友兼相棒・月ヶ瀬薫──もちろん、性別は男──のことを、花村がいわゆる恋愛的な意味で好きだ、ということである。
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