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天の川の下で

七夕の尊礼。あんまり七夕関係ない気もします。
ParallelKingdom3で配布していた七夕ペーパーラリー用ペーパーの中身そのままです。


【天の川の下で】

 気配を感じて、空を見上げた。
 できることなら、遭遇などしたくない。可能な限り回避したい。心の底から、そう思っているはずだ。
 なにしろ、顔を合わせれば険悪な雰囲気にしかならない。初対面のときから、すでにそうだった。あのやけに整った、生半可なことでは崩れない薄い笑みを浮かべた慇懃無礼な面を眺めていると、無性に苛立たしくなる。
 だからこそ、そんな男が感情を顕わにして表情を歪めるとき、悔しそうに腹立たしそうに自分をまっすぐに睨みつけるとき、心が高揚するのだ。それは赤の王として頭上に力の象徴である剣を抱いてからずっと忘れていた感情で、日頃は意識して抑え付けている力の制御を忘れても構わない解放感と相まって、周防をこの上なく夢中に、そして熱くさせる。
 ――だが、べつに会いたいわけではない。なのにその気配を察知してしまえば、無視するという選択肢はどういうわけか脳内のどこにも存在しなくなる。
 向こうも、おそらくは気配に気づいているはずだ。それなのにまったく反応しない、こちらへ視線を向けようともしない、その事実が気にくわない。
 会いたくなどないのだからそのほうが都合がいいはずなのに、どうしてなのか。もっとも、その理由を追及する気はこれっぽっちもなかった。 
「おい」
 ただ、衝動のままに口を開く。己の耳に飛び込んできたその声は、あからさまに不機嫌だった。それこそ通りすがりの赤の他人が耳にすれば、びくりと全身を震わせただろうほどに。
「おや?」
 だが、今唯一目の前にいるその男が、そんな反応を示すわけもない。長い前髪と特徴的な青い制服を揺らして、声がしたほうへと顔を動かす。かちりと、金と紫の視線がぶつかり合った。
 ――月明かりを浴びてこちらを見下ろす姿は、硬質なオーラを放っている。すべてを滅茶苦茶にしてやりたくなるほど、整っていた。
「なにしてんだ、てめえ」
「それはこちらの台詞です、チーム吠舞羅の周防尊。ここは禁煙のはずですよ」
 流れるように吐き出された言葉は、毒しか含んでいない。それでも、その声音だけは耳に心地良く感じられるのだから、不思議だ。
 それでも投げつけられた嫌味に、ぴくりと周防の眉が動く。そんな表情の変化を見て取って、青の王・宗像礼司が楽しそうに口の端を上げた。性格の悪さがにじみ出る、そんな笑みだ。
 腹の底に、熱が灯る。その熱は、ふつふつと全身に広がっていった。
 戦意に火が点く。ああ、今すぐに、この勝ち誇った面を崩してやりたい。
 その衝動を堪えるつもりなど、周防には最初からなかった。いつだって、宗像礼司の前では。
 幸い、ここには人気もない。誰も、いない。
 こんな真夜中に、町の中心地から外れた廃墟へと好きこのんで潜り込むのは、自分とこの男くらいだ。
「おい」
「なんでしょう?」
「暇なら、付き合えよ」
 指の間に挟んでいた煙草を、瞬時に灰も残さず燃やし尽くす。
 ゆらりと全身から立ち上る闘気を目にして、宗像がその形の良い眉をしかめた。
「なぜ、わざわざあなたと遊んで差し上げなければならないのですか。せっかく、このように星が綺麗な夜だというのに」
「てめえがこんなとこにいるのが悪ぃ」
「風情を理解しない男ですね。今夜は七夕ですよ。まさか、ご存知ないのですか?」
「ごちゃごちゃうるせえ。そんなの、どうだっていいだろ」
 そう、どうだっていい。彦星と織姫がどうなろうが、関係ない。そもそも今夜は晴れているのだ、きっと彼らも無事に逢瀬を果たせているだろう。
 それなら、周防の願いを優先してもらったところでバチはあたらないはずだ。
「大体、七夕ってのは願いが叶うんじゃねえのか」
「短冊に願いを書いてその願いが叶うように笹に飾る風習は確かにありますが、べつ願いが叶う日というわけではなく……まあ、言っても無駄だということはよくわかりました。まったく、仕方がありませんね」
 屁理屈なのは承知の上で自分勝手に主張すれば、最初は至極まっとうな指摘と訂正をしようとしていた宗像が、あきらめたようなため息を吐く。実際、あきらめたのだろう。軽く目を伏せた宗像の表情は、まるで頭痛を堪えてでもいるかのように見えた。
 だが次の瞬間、宗像が目を上げたときには、もうそんな雰囲気はどこにも残っていない。
 見慣れた不敵な笑みが、周防を見下ろしていた。
「七夕だというのにクランズマンにも相手にしてもらえない哀れな赤の王のために、少しだけ譲歩して差し上げましょう」
「そうかよ」
 青が、宙を舞う。裾の長い上着が風をはらみ、周防より高い場所に立っていた宗像は、同じ目線の地へと下りてくる。
「ええ。嬉しいでしょう?」
「ああ、腸が煮えくりかえるくらいな」
「ふふ、そうですか。それはそれは、大変光栄です。――宗像、抜刀」
 すらりと、流れるようにサーベルが抜かれる。暗天に広がる天の川とほんの少し欠けた月が刀身に一瞬、映し出されたのが見えた。
 辺りの空気が一気に変わり、わき上がる高揚感にへと周防は身を任せる。
 いつも通りの憎まれ口を叩きながら眼鏡のブリッジを押し上げた宗像の眼差しがほんの少しだけ柔らかくなっていたことにも、それに応えた自分自身の声がわからない程度に弾んでいたことにも、周防は気づかなかったフリをした。

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